女性の後輩を指導するときもたとえを使うことが多い。たとえば、「いま使っている化粧品が自分の肌にぴったり合っていたら、いくらほかのものを薦められても変える気にならないでしょう。ドクターもいまの薬に満足していたら、なかなかほかの薬は使いたくないものなの」というふうに、わかってほしいと思うと、自然に相手に合った比喩が浮かぶ。

アステラス製薬では、各営業の体験や発見を全社に発信する情報レポートを募集しており、すぐれたレポートは半年に一度表彰されるが、片井さんは毎回必ず「ベストノウハウ賞」に選ばれている。たとえ話のエピソードや、名刺に貼るシールの工夫もベストノウハウ賞に輝いた。ノウハウを自分個人のものとして抱え込むつもりはない。ほかの営業所の人のやり方が素晴らしいと思ったら、詳しい話を聞くために、面識がなくても電話をかけることもある。

「全国のMRが集まる研究会に出席したとき、名刺交換をしたら、『あなたがあの情報レポートの片井さん?』と言われたことがあります。私の経験がみんなの役に立つことが本当にうれしい」

「決めトーク」は
10分程度の薬の説明会のトークに力を入れる。聞き手の趣味などを事前にリサーチし、たとえ話に織り交ぜて印象に残るようにする。

自己啓発の仕方
ゴルフから映画、読書までとにかく趣味を幅広く持つ。そうすることで人間関係が広がるし、話も合わせやすい。

優先順位のつけ方
すべてを80点でやるのではなく、力を入れるべきところとそうでないところをはっきりさせる。説明会などの優先事項を100%以上の力でやる。

服装、化粧の仕方
扱う薬のイメージカラーの服を着たり、朝のテレビの占いを見てラッキーカラーの服を着ることも。

記憶に残る失敗談
ある病院で、薬局に宣伝する旨を伝えてからドクターにお声がけするというルールを知らずに、直接ドクターに宣伝してしまった。後で薬局長に怒られ、上司と一緒に謝りに行ったところ、その姿勢は評価してくれた。

※すべて雑誌掲載当時

(芳地博之=撮影)
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