ブームに乗じた「偽物」は生き残れない

今回は、しばしば受ける「最近、飲食業界の中でヒットの兆しがあるものってありますか?」という質問について考えてみます。

ヒットの話をする前に、ブームが沈静化したケースのお話をしてみましょう。変化の激しいこの業界、数年前に流行ったものがあっという間に下火になるということはしばしば起こります。

直近の例で言えば「漁港系(?)海鮮居酒屋」がその筆頭です。「●●水産」、「■■丸」、「▲▲港」、「築地直送」、「浜焼」、「豪快刺身盛り」、そんなフレーズが店名やキャッチフレーズについていて、トロ箱(魚介類を入れて輸送するための発泡スチロールの箱)や大漁旗が店の内外を飾っているタイプの居酒屋です。おそらく皆さんの知っている街にも、一軒くらいはあるのではないでしょうか。

数年前にこうした店が出てきたときは画期的でした。普通の居酒屋の刺身はそれほどおいしくないけれども、とはいえ寿司屋では予算オーバーということで、おいしい魚介類を気軽に食べられる店はこれまでそれほど多く存在しなかったからです。そして、東京では「根室食堂」、「かば(=山陰地方の魚介にフォーカス)」など、これまであまり注目されてこなかった地方の海産物を前面に出した店が続けてオープンして脚光を浴びました。

しかし、その後類似業態が続出します。そして多くの場合、それらの店には魚介類に対する強い思いや特別な仕入れルートがあるわけではなく、「流行りそうだから」という理由だけで出店をしています。当然、提供している海産物のクオリティや鮮度は決して素晴らしいと言える代物ではありません。

こうしてあっという間に化けの皮がはがれたこれらの業態は、今や閑古鳥が鳴く厳しい状態に追い込まれています。もちろん、ブームの前から魚介類にきちんとこだわっている志の高い店も存在しています。例えば、母体が魚屋である「魚真(渋谷・恵比寿などに店舗あり)」という居酒屋は、提供している海産物のクオリティとその価格、そしてスタッフのホスピタリティなども素晴らしいので、依然繁盛を続けています。その意味では海鮮居酒屋うんぬんの話ではなく、本物は生き残って偽物は淘汰されるという当たり前の話ではあります。