叩き込まれた「いいアウトプットの出し方」

新幹線で岡山に行き、岡山のトラック基地から山形行きのトラック便に乗せてもらいました。仮眠を取りながら交代で運転するので運転手は二人ですが、私はずっと起きて助手席に乗っていなければ調査になりません。

道中、運転手にいろいろ質問しながら、トラック野郎気分を味わいました。しかし、小雪舞い散る山形に到着したのは午前3時。宿泊の手配をしてなかったので、とりあえず山形駅までタクシーで向かうと、誰もない駅の構内に達磨ストーブの明かりだけが煌々と灯っていました。ストーブに当たって始発を待ちながら、「こんなんで、俺の人生、どうなんやろ……」なんて思ったりして。

東京に戻ってレポートをまとめたら、「次はダンプに乗ってこい」。

今度は栃木から千葉に砂利を運搬するダンプでした。夕方に現場に付いたら、荷物が載せられないので出発が3〜4時間遅れるということで、「兄ちゃん、ちょっと時間あるし、これから麻雀すんねん。ちょっと入れや」

「いや、ボク、麻雀よくわからへんので」

「ええから、ええから、負けても安うしとくから」

結局、高い授業料を払って、ダンプの運転手の仕事と人生について、いい勉強をさせてもらいました。

最初からそんな仕事だったし、その後も現場に足を運んで自分の目で観察して、気づいたことや発見したことをレポートに落とす仕事を随分やらされて、「現場を見る」ことの大切さを仕込まれました。

それからインタビュー調査。たとえば事務機器の販売店20社に飛び込みでインタビューするとか、そういう調査もよくやりました。誰とでもすぐに仲良くなれるタイプなので、市場調査にはよく駆り出されましたね(笑)

いいアウトプットというのは「驚き」なんです。皆が知っていることをどんなに美しく分析しても誰も驚かない。「あれ? こんなのどこから出てきたの?」という驚きが必要なんです。

しかし皆を驚かせるような新しい発見というのは、なかなかできるものではありません。政府統計にしても、業界の統計にしても、あるいはクライアントの資料にしても、皆が同じものを見ているわけですから。

皆と同じ発想で同じデータを眺めていたって、新しい発見はできない。皆が見えていないものを見るためには、独自の発想や視点が必要になる。それがどこからくるかといえば、やはり「現場」なんです。現場から学ぶ、お客さんから学ぶしかない。

もちろん、現場の関係者やお客さんから学ぶにしても、聞き方によって得られる情報は違ってくるわけで、そこはコミュニケーションスキルの問題もあります。

しかし、それ以前のリサーチャーやアナリストという仕事の基本として、驚きと説得力のあるアウトプットを出すためにいかに現場が大事かということを、最初に叩き込まれたような気がしますね。

次回は「後輩が語る"マッキンゼー青春の日々"(3)—大前さんとの『人づくり』」。10月1日更新予定。

(フォアサイト・アンド・カンパニー代表取締役、ビジネス・ブレークスルー大学・大学院教授 斎藤顯一=談/小川 剛=インタビュー・構成)