音楽の売り方の可能性

そんな中最近TBSが自社のライブハウスBLITZでスタートしたサービスが面白い。T2Dというそのサービスは、その日行われたライブ音源を参加した人だけが有料で音源を購入できるというサービスであり、例えばOverTheDogsというアーティストのライブの時は7曲1500円で購買率は観客の40%ととても高い購入率を示している。ライブは毎回違う演奏であり、自分が参加した時の音源はファンにとっては大事な思い出コンテンツであり、お金を払って購入する価値のあるコンテンツである。それがデジタル技術により、その日のライブ終了後1時間後から自分のスマホにダウンロードできるようになるという便利さも兼ね備えたサービスである。

→BLITZ T2D SYSTEM
http://totte.tv/

最近の売り出し中のアイドルはライブ後にCDを手売りするというスタイルも多いが、ファンであればCDはすでに持っていることが多く、同じCDを購入することの価値は握手できるからぐらいになってしまう。こういう仕組みがあればコンテンツとしての価値として新しくお金をとれるビジネスモデルを生み出すことができる。

このようにスマホの普及やデジタルコンテンツ技術の登場で可能になる新しい価値創造に音楽業界はもっと力を入れるべきであり、コンテンツ配信をこれまでのパッケージを単純に置き換えたものであるという認識でいる限り市場はもはや広がることは無いだろう。実際米国では昨年度デジタルコンテンツ配信がCDの売り上げを越えているが、単価が下がっていることでCD販売・配信市場全体としては伸びていない。Appleが創り上げた現在のiTunesMusicStoreも音楽販売のECサイトという意味ではとても優秀かも知れないが1曲いくらという売り方であり、 SNS機能も失敗したりなど、まだまだ新しい価値創造までにはいたっていない。

しかし米国ではストリーミング型の定額制聴き放題市場は伸びている。コンテンツひとつひとつの価値ではなく、定額制にすることで確実に音楽への支出を獲得するというアプローチは新しい可能性を感じる。一方日本はまだまだCDの販売比率が76%という物理パッケージ中心の市場であり、逆に考えれば今後のデジタルコンテンツでの新しい価値創造で一気に新しいサービスに移行できるチャンスがあるとも言えるかも知れない状況である。