この新大陸の特徴は、従来のケインズ経済学的な実体経済に加えて、ボーダレス経済、サイバー経済、マルチプル(倍率)経済の4つの経済空間で構成されていることだ。それらが相互に作用し、渾然一体となっているのが「見えない大陸」だが、文字通り、本物の大陸のように陸地や建物があるわけでもない。だから、見えない人には残念ながら全く見えない。

PCの概念を変えたデル社のマイケル・デル氏。(ロイター/AFLO=写真)

しかし見える人には見えていて、見える人同士が話すと不思議なくらい同じ絵を描けるのだ。その絵が見えない人に見せようと、いくら説明したところで理解できない。新大陸の世界では、コミュニケーションの道具は数字ではなく、「絵」なのである。自分が見ている絵をわかりやすい言葉で語る。この「見えないものを見る力」「構想し、伝える力」が、新大陸のコミュニケーションでは、最も重要となるのである。

実際、大半の人が見えなかった『新・資本論』は出版当時は、あまりに飛躍した内容から知る人ぞ知る、勉強する人ぞ勉強する1冊だった。私が学長を務めるBBT(ビジネス・ブレークスルー)大学院大学では、10年近く経った今でもテキストとして使っているが、皆“アービトラージ”や“マルチプル”などの概念を理解するのに苦労していて、ようやく最近になって何となくわかったという人が増えてきた。

マイケル・デル氏は流通を通さない注文生産というデルのビジネスモデルをテキサス大学オースティン校の卒業論文に書いた。しかしながら、マイケル・ポーター氏のバリューチェーン理論に適っていないという理由でC評価を付けられた。グーグルやシスコシステムズの成功も、ポーター氏の理論では説明がつかないのである。このように従来の戦略論が当てはまらない事業が次々に出てくるのが「見えない大陸」の特徴だ。