書くことで「思考のタネ」がつくられる! 畑村創造工学研究所代表の畑村洋太郎さん、経営コンサルタントの小宮一慶さんが明かす目標具現化への必須テクニックとは――。

「ノート術の達人」というと、機能的なメモ帳に、話の要点をもらさず、見栄えよく書き留める人を想像するかもしれない。だが“メモを取る”という作業に、必要以上に必死になるのは考えものだ。

「そういう人は手段が目的化しているんですよ。書き留めたことを仕事に活かすのが本来の目的。メモを取ることに一生懸命になるよりは、相手の話をちゃんと聞いたり、じっくり観察したほうがいいですね」と、畑村創造工学研究所代表の畑村洋太郎さんは話す。

畑村洋太郎さん愛用のレポート用紙。「同じことを2度書かない」というルールを決め、必要に応じてコピーを切り貼りしている。

畑村さんの考えるメモとは、単なる備忘録ではない。重きを置くのは、自分が見たもの感じたものを「キーワードとして書き出すこと」。メモするという行為は、思考を深めるプロセスの一部なのだ。

専門である失敗学の研究のため、工場や災害の現場に足を運ぶときも、技術的な事柄を除いて、その場ではメモは取らない。「そんなの時間のムダでしょう。写真も必要以上は撮りません。それよりも、自分の目であちこち眺めて、脳に印象を植えつける。写真に依存すると『あとで写真を見て確かめればいいや』と思ってしまいますからね」。

そして1週間ほど経ってから、見てきた内容のキーワードを抽出する作業に移る。このとき、はじめて言葉に書き起こすのだが、考えを深める過程で余分なものはそぎ落とされ、純化されている。このキーワードが、のちに「見学記」をまとめる際の「思考のタネ」になるのだ。