高い英語力を持つ中途入社の社員


楽天(左)と日産(右)の社員食堂のメニュー。すべて英語で書かれている楽天に対して、英語と日本語で併記されている日産。全社員一律での英語公用語化を目指す楽天と、必要なケースに限り英語を使う日産。それぞれの企業姿勢がメニューにも垣間見える。

日産の場合は、突然トップに外国人がやってきて、必要に応じて現場ごとに英語化が進行した。英語習得にあたっては「このポジションに就く人は、最初から英語が絶対に必要とわかっている場合は、集中英語コースを提供したり、個別にサポートしてきた」という経緯がある。

これに対して、楽天は必要性ではなく、将来展望に基づいてトップダウンによる公用語化を一気に、そして全員一律に推進するという環境的な違いがある。

日産自動車のグローバル本社に勤務する30代の女性社員は楽天の英語化推進について「できないよりできたほうがよい。ただ、できることで給与が上がるとか海外研修のチャンスが与えられるといったメリットが感じられなければ上達しないのではないか。ビジネス的には必要に迫られてやるべきであって、必要でない段階で社員全員が英語でしゃべるというのはすごく効率が悪い」と指摘する。

英語に関して言えることとして、前出した楽天と日産の女性社員が口を揃えるのは、英語の公用語化を打ち出した後の楽天にも今の日産の本社にも、中途で入ってくる転職組の社員はほぼ例外なく英語ができる、ということだ。中途社員ではネイティブ並みの英語力を持つ社員も全く珍しくないという。グローバル化を志向する企業の一員になるためには、英語が必須であることは間違いないようだ。

グローバル化の推進は生き残りをかけた企業の危機感がもたらしたものだ。経営者はそれを痛感していても、現実に必要に迫られない現場の社員と危機感を共有することは難しい。

そうであるならトップダウンで公用語化を図るのもいいかもしれない。ただしそこには、人的資源とビジネス上のリスクが発生する可能性がある。最終的には、グローバル化の進展を社員が身近に感じられる必要性と公用語化をうまくリンクできるかどうかに、成功の帰趨がかかってくるだろう。

(小原孝博=撮影)
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