ところが「日本語で商売するところにまで、なぜ英語を持ち込むのか」という幹部クラスの批判が高まり、結局、断念した経緯がある。差し迫った必要性が感じられない限り納得は得られないというのは楽天にも共通する点だろう。

公用語化という概念はないが、社内の英語化が進んでいるのが日産自動車だ。ただし、英語化に関するルールや規定は存在しない。同社内には220人の外国人が在籍し、あくまで「日本語が話せないスタッフがいるときは英語で話し、日本人同士であれば日本語を話すなど状況に応じて英語を使う」(小阪享司・人事部人事企画グループ主担)スタイルだ。

日産 人事部 人事企画グループ 主担
小阪享司氏

日本企業はグローバル企業でも役員会議は日本語、外国人の採用でも「日本語堪能」を要件にしているところが多い。しかし日産はルノーとの提携によるカルロス・ゴーン社長をはじめとする外国人とのコミュニケーションツールとして英語が必須となった。ゴーン社長が出席する役員会をはじめ、日本語が堪能でない外国人がいる職場の会議は英語で行われることが多い。ましてや外国人の採用に日本語力は問われない。

上司が外国人であればミーティングも英語なら、報告する資料も英語で提出する。だが、資料は英語でも、日本語ができる外国人であれば日本語で会議を行うなど臨機応変に英語と日本語を切り替えている。上長をはじめ全員が日本人の場合は会議も資料も日本語である。全員一律の英語公用語化とは一線を画す。

このように、日産の社員は英語が話せなくても定年まで過ごすことができるが、マネジャーなどに昇進していくには英語能力は必要だ。

小阪主担は「結果的に上位のポジションに就く際には考慮されることはあるだろう。当社の場合は外国人が他の会社より多いため、英語を使う機会も多く海外に行っても頻繁に使うようになっている。これから海外でビジネスを展開する企業も同じであり、英語ができる人がたぶん会社を引っ張っていくことになると思う。ことさらに英語を強調するつもりはなく、あくまでコミュニケーションツールの一つではあるが、英語が重要なツールの一つであることは間違いない」と話す。