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ホンダ社長 伊東孝紳(いとう・たかのぶ)
1953年、静岡県生まれ。78年、京都大学大学院工学研究科修了、ホンダ入社。2000年にホンダ取締役。鈴鹿製作所長や本田技術研究所社長を歴任し、07年に専務、四輪事業本部長、09年、現職。


 

エコカー補助金の“駆け込み需要”が期待されたほどの効果もみられず、先行きに不透明感が漂っている国内の自動車市場。そんな状況下でも、久しぶりに笑顔を浮かべて独り気を吐いているのが、ホンダの伊東孝紳社長である。大きく業績を回復させたのに加え、昨年末に発売した新型の軽自動車「N BOX(エヌ ボックス)」が絶好調。4月には、軽の車名別新車販売台数で、それまで6カ月連続で首位の座を守ってきたダイハツの「ミラ」をあっさり抜き去り、その後もトップを走り続けている。

「N BOX」に人気が集中しているのは、大人2人でも“車中泊”ができるほどの室内空間の広さや、軽自動車らしからぬ工夫を凝らした機能とデザインが、幅広い層のユーザーの目に留まったから。伊東社長も初めて試作車に出合った瞬間に「これならいけるぞ」と直感。間髪を入れず、開発担当者に対して
「一刻も早く市販できるように急げ」と檄を飛ばしたという。

ホンダは「N BOX」発表以降も軽自動車のラインアップを強化しており、7月には車椅子仕様などの「N BOXプラス」を追加。今秋には第3弾として新車種の投入も予定している。今年度の国内販売台数目標73万台のうち「4~5割を軽自動車で占める計画」(営業担当役員)と強気である。

社長に就任してすでに4年目に入った伊東氏だが、昨年はまるで“厄年”とも思えるほど不運な1年だった。地震で栃木の研究所が被災したうえに、タイの洪水で現地の工場が水没。再び減産体制を余儀なくされた。軽自動車のヒットで社内は一転して明るいムードに変わったが、この先も伊東社長には本来の「ホンダらしさ」を取り戻すという大仕事が残っていることは言うまでもない。

(写真=PANA)
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