マネをしないとボーナスが半分に!

一行はやがて「ダスキン」の看板がかかる2階建ての建物に到着。小山はさっそく、営業成績のグラフなど所定の位置に貼られた掲示物や、机やPCなど機器類の配置といった細々としたノウハウについて説明を始めた。

小山のまわりにはすぐに人だかりができる。うっかりすると、説明を聞き逃してしまいそうだ。しかし小山の声は、インターカムを通じて全員の元にきちんと届く仕掛けである。

壁にA4サイズの紙がずらりと並んで貼ってある。説明書きに加えて、それぞれに写真が2枚。どうやら「改善前」と「改善後」を示しているようだ。

「これが『パクリ改善シート』です。10年前からやっています。仕事がやりやすくなることなら何でもいい。社内外で実行され効果が出た、または出そうなことを自分の部署でも取り入れて、業務を改善するわけです。所定のチェックを受けたら使用前・使用後の写真をつけて、このように事業所の壁に貼り出します」

パクリ改善シートの正式名称は「改善掲示板」。実はこのシート、武蔵野のパクリ経営を象徴するアイテムのひとつだ。

武蔵野の各部署には4週に一件ずつ、パクリ改善シートに掲載される「パクリ案件」を必ず提案・実行しなければならないというルールがある。目標ではなく、義務である。小山はいう。

「マネをしないと武蔵野では賞与が半分になるんです(笑)。逆に、誰かがやってうまくいったことをマネすると、評価が上がる仕組みです」

なんと賞与に直結した、掛け値なしの必達ノルマなのである。