夜、情報を吸収し朝、思考を醸成する

若い社員にもよく「一流のものに触れろ」「仕事以外の話を2時間以上できるようになれ」と言っていますし、自分でも実践しているわけです。仕事だけでいいと思っていると仕事バカになるだけで、新しいアイデアを生み出すことはできません。仕事に活かすためにも、そしてもちろん人生を豊かにするためにも、優れた文化に触れる時間を大事にしたい。そこには気分転換以上の意味があるのです。

このように夜が情報や文化に触れて吸収していく時間とすれば、朝は考えを醸成する時間。毎朝の起床は原則5時半ですが、そのあと30分ほど時間をとって、自宅周辺を散歩します。この毎朝の30分が、1人で考える絶好の機会になるのです。

机に向かってうんうん唸ったところでいい考えが浮かぶことは少ないのですが、山も海も近い環境の中で歩き回っていると、ふと新しい考えが浮かんでまとまっていくものです。この時間に1日のスケジュールも思い浮かべて、会社についたときはすっかりスタンバイできている。それが社長職を9年間、会長になって6年目を迎える中で生活のリズムになっています。

仕事に取りかかる前に準備、段取りを決めるのが大事であることはいうまでもありません。

建築会社では新入社員に最初に教えて最後まで教えるのが「段取り」なのだそうです。最初に効率的な段取りを考えてメンバーに徹底し、一斉にスタートする。それをするかしないかで、同じ建物を造るのでも、収益が挙がるか赤字になるかの差が生じる。それはほかの仕事でもまったく同じでしょう。

もちろん、その中で優先順位をつけて手早く進めていくことも重要です。だらだらやっているのでは、他人の時間を奪うことにもなりかねない。限られた1日24時間を有効に使い、仕事をスピーディーに進めていくことは、自分のためだけでなく、他人への親切でもあると私は思います。

※すべて雑誌掲載当時

(石田純子=構成 的野弘路=撮影)
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