たとえば、輸送部門に必要以上の人員を抱えている企業は業務効率が悪い。その会社のリーダーは資源を無駄づかいし、業績を押し下げる要因をつくり出している。それと同じ意味で、輸送業務で二酸化炭素を過度に排出している企業も、業務効率が悪いといえる。この会社は資源を無駄づかいし、この先間違いなく上昇するはずの無用なコストを発生させている。気候関連のコストを管理するにあたってベストプラクティスを実施することは、競争力を維持するために必要最低限の措置である。

二酸化炭素排出のコストを理解することに加えて、すべての企業が、エネルギーや水を入手できる地域の変化、インフラやサプライチェーンの信頼性、伝染病の流行等々の気候関連の影響に対する自社の脆弱性を査定する必要がある。企業のリーダーは、これらのリスクを体系的に評価したのち、どのリスクが業務構成の見直しによって引き下げられるか、どのリスクを保険契約やヘッジ契約によって他者に転嫁するか、どのリスクを引き受けるかを決定しなければならない。

すべての企業にとってとはいえないが、一部の企業にとっては、気候変動に対するアプローチは業務効率の問題を超えて戦略的な問題になる可能性がある。

一部の企業は、気候変動に取り組む過程で、気候変動が生み出す需要に応える製品(ハイブリッド車など)を開発したり、気候変動の問題により効果的に対処するために業界再編を主導したり、真の競争優位を生み出すために気候変動の影響を受ける分野でイノベーションを行ったりして競争ポジションを強化もしくは拡大するチャンスを見つけるだろう。

たとえば、アウトバウンド物流やアフターサービスといった活動では、気候変動に対する業務の観点からの対応策として、輸送や顧客訪問に使う車輌のエンジンをより効率のよいものに変える、渋滞に巻き込まれる確率を減らすためにスケジュールを組み直す、といった措置が含まれるかもしれない。それに対し、戦略的アプローチの場合は、その活動の中身を全面的に変更するという対応になるかもしれない。つまり、アウトバウンド物流においては、本やマニュアルにかえて電子バージョンのものを送付するとか、アフターサービスの面ではサービス技術者が実際に訪問するのではなく遠隔診断・修理プログラムを採用するといった対応である。