執行役員になった2003年、雑誌の書評で本書を知った。第二代住友総理事・伊庭貞剛を恐らく初めて取り上げた一冊であり、当時は役員の間で話題になった。

住友の事業の根幹だった別子銅山の製錬所を、煙害を機に移転させ、荒廃した跡地に大規模な植林を行った伊庭。本書は、“信用を重んじ、確実を旨とする”“国家を利し、社会を利する”住友精神を具現化した彼の一生を追っている。私は入社以来、折に触れてその精神を言い聞かされてきたが、一読して「あのとき言われたのは、こういうことだったのか」と幾度も納得し、今も仕事で困ったときの判断基準にしている。社員もこの大先輩がいたことを知り、かつ誇りに思ってほしい。