続く第二の習慣「目的を持って始める」と第三の「重要事項を優先する」も体得していくことが大切です。なぜなら私は、人間の成功は先天的な要素よりも後天的な努力でかなりの部分が決定すると考えるからです。

コヴィー氏も本で明らかにしていますが、7つのうち3番目までは、自己克服と自制に関連した私的成功のための習慣です。第四の習慣「Win‐Winを考える」と第五の「理解してから理解される」、第六の「相乗効果を発揮する」は、人間関係や組織での活躍など、よりレベルの高い公的成功といえます。

このことは、マズローの「欲求五段階説」に当てはめると理解できるでしょう。私たちはまず、空腹を満たし、安全に生活するために働く。しかしやがて、仲間が欲しいという社会欲求、尊敬されたいという欲求が出て、最後は自己実現が目的です。この社会欲求から上を満たすためには、コヴィー氏の示す公的成功が必須になります。

会社では、課とか部が集団で仕事をします。そして、当然のことですが成果を挙げなければなりません。その際、リーダーである課長や部長に求められるのが部下や得意先との良好な関係づくりです。そのためには、相手の立場を深く考えるべきです。そうすれば、双方が満足のいくやり方が見つかり、協力も得られることでしょう。

これこそWin‐Winの関係にほかなりません。部門を活性化させ、自分自身も評価され、双方が幸せになれるわけです。私は、これこそ働くことの真の意義だと思います。あえていえば、自己実現が個人の満足の範囲に止まってしまうとすれば、周囲に理解と相乗効果を生む生き方は、より自分を磨き、成長させることは間違いありません。

その意味で、数年前に読んだケント・M・キース氏が著した『それでもなお、人を愛しなさい』の指摘は強烈でした。そこには、人生の意味を見つけるために「人は不合理で、わからず屋で、わがままな存在だ。それでもなお、人を愛しなさい」とありました。