人間は生まれてきたときは、どんな人でも超ポジティブ思考だった。ハイハイしている赤ちゃんを思い浮かべてほしい。赤ちゃんは積極性のかたまりだ。消極的な赤ちゃんは見たことがない。何度ひっくり返っても「立つ」という目標をあきらめない。100回ひっくり返ったから「これは難しいかも」とあきらめる赤ちゃんはいない。どんなに苦しくても、最後には目標を達成する。人間は生まれたときには何でもできると思うプラス思考なのである。

だが、成長して大人になるにつれ、世間の常識にとらわれるようになり、脳に否定的な情報がインプットされるようになる。ちっぽけな常識の枠ができて、その中で判断するから自己防衛本能が出る。そして、否定的な脳が構築されてしまうのだ。

しかし、否定的な脳になって苦しんでいる人でも、簡単に変えることができる。それは脳と心のスイッチを切り替えることで可能だ。パソコンでいえば、否定的なソフトを肯定的なソフトに入れ替えればよいだけだ。

私は長年脳の研究をしてきた。とくに右脳(イメージ)と左脳(思考)を司る大脳新皮質の内側にある大脳辺縁系、いわゆる「感情脳」の存在に着目してきた。その結果、イメージや思考だけでは心をコントロールすることはできず、感情脳が人を動かすことがわかってきた。感情脳が「快」の状態にあれば肯定的な思考ができるようになる。

そのためには言葉とイメージ、そしてボディランゲージの3つが有効だ。

第一に肯定的な言葉を口に出してみること。言語中枢である左脳で「ありがたい」と言うと、連動している右脳でもそれをイメージできる。プラスの言葉はプラスのイメージトレーニングをやっているようなもので、それを先人は言霊(ことだま)と呼んだ。肯定的な言葉を口から発すると前向きな心ができる。

次にイメージ。私はスポーツ選手のメンタルトレーナーも長く続けているが、プロゴルファーだったら、パッティングのとき「入る」というイメージトレーニングを何度もする。まだボールが入る前から、肯定的なウソの記憶データを脳にインプットするのだ。

最後にボディランゲージ。嫌なことがあったら即座に忘れるようにする。そのための動作を自分でひとつ決めておくとよい。私の場合は「なし!」と言って指をパチンと鳴らしている。以前、元読売ジャイアンツの桑田真澄選手と会ったとき、打たれたら後ろを向いて「なし」と言葉に出していたと聞き、「さすがだな」と感心したことがあった。