ちなみに少年法改正によって変わったのは、処分の部分だけではない。00年の改正では、少年審判において裁判官の合議制が一部認められるなど事実認定の適正化も盛り込まれたほか、もう1つ重要な変化があった。ようやく被害者に目を向けるようになったのだ。

じつはそれまでの少年法では、被害者は忘れられた存在だった。もともと刑事システムは国が加害者を罰するための仕組みであり、被害者を救済することを目的とはしていない。かつて少年犯罪でわが子を殺害された6組の遺族に面談し、『犯罪被害者と少年法』を著した後藤教授は、被害者の不満をこう代弁する。

「これまで少年事件は、成人の事件以上に被害者に冷淡でした。08年の改正まで、少年審判は通常の裁判と違って非公開。これは審判に必要な情報を隠さずに明かしてもらうための措置でしたが、被害者にも非公開だったので、審判がいつ始まり、そこで何が話し合われているのかさえよくわかりませんでした。わが子が殺されても、どういった経緯でなぜ殺されたのか、もっとも知りたい情報がわからないまま処分が決定されたのです。

また、少年審判に至るまでの期間が短いことも問題でした。少年事件は逮捕されて23日以内に家裁に送致され、最大4週間(00年改正により現在は8週間)で処分が決定。そうすると処分が決まるのは、殺害事件ならわが子が亡くなって四十九日の法要が済んだあたり。遺族にしたら何の情報もないまま気持ちの整理もつかないうちに処分が決まり、終わったことにされてしまう。それでは納得いかないですよ」

こうした批判を受け、00年の改正では、申し出があれば事件記録の閲覧または謄写、被害者からの意見の聴取、被害者等への審判結果の通知が新たに制度化された。しかし、このときの改正では、事件記録の閲覧・謄写は民事訴訟を起こすための損害賠償目的のみに限られ、意見を聞いてもらえるのも被害者本人に限定。それが08年の改正で被害者の権利は拡充され、損害賠償目的でなくても閲覧・謄写は可能となり、意見聴取の対象者も場合により家族に拡大。これまで認められていなかった被害者による審判の傍聴も、重大事件の場合は原則可能に。被害者が蚊帳の外に置かれていた改正前と比べると、格段に進歩した印象だ。