今回は大学(University)ということで、アーティストになるために何を学ぶべきか、ということをお話ししたいと思います。

2000年、シドニーオリンピックの年、私はシドニーに住んでいました。4年に一度のスポーツの祭典では、同時期にアートのイベントも行われることがあります。スポーツメーカーMIZUNOと日本航空の企画で、4年間頑張ったオリンピックアスリート達を盛り上げるためにアーティストの日比野克彦さんにお願いして、子供たちと共に応援のアートイベント「HIBINO in SYDNEY」というヨットの帆に絵を描くイベントを行いました。

シドニー現代美術館でワークショップを行った「HIBINO in Sydney」
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シドニー現代美術館でワークショップを行った「HIBINO in Sydney」

子供たちから質問が挙がりました。「日比野さんはどうしてアーティストになったの?」。その問いに日比野さんは「僕は子供の頃からずっと絵を描いてきた。そして大人になってもそれを止めなかっただけなんだ」。私は日比野克彦というアーティストは素晴らしいアーティストだと思っておりますし、このエピソードはとても大きなことを示唆していると思っています。日比野さんは現在、母校・東京藝術大学で教鞭をとり、熱心に後輩たちの良き先生になっているのも、それを裏付けています。

ところで、日本でアーティストを目指す若者は、どうやってアーティストになっているのかというと、だいたい以下の3つが考えられます。

1つは日本にある美術大学を卒業すること。2つめは将来を考えてロンドンやニューヨークのアートスクールに留学すること。3つめは美大には行かないで全く別の仕事を経験しつつ作品を作ること。1番目の美大ですが、毎年、たくさんの卒業生を輩出しますが、現実的には卒業と共に、企業に就職したり美術の先生になる人が多く、プロとして歩き出すのは少数派です。2つめの海外留学は、留学が貴重であった頃は「洋行帰り」として大事にされたのですが、海外留学がポピュラーになった現在では帰国後の仕事確保が大変です。3つめは仕事の合間に作品を作り、発表の場所を探し、さらにコレクターとなる協力者を探すという、大変な道を歩むことになります。

最近、企業に進む若者に対して、先輩たちがさまざまな提言をしています。ビジネスマンになるためのアドバイスですが、聞いているとそれはアーティストにとっても大いに有効だと感じます。例えば、明治大学教授の斎藤孝教授は「毎日、10枚程度のリポートを書くことを学生に課して、ハードな訓練を行うことが大事。国語は体力。圧倒的でハードな訓練があれば書くことが身に付く」と述べておられます。