ではどうしたらいいのか。「いつ会社を出てもいい」という心構えは、若い時代から養いましょう。得意分野を勉強して、他社でも通用するようにブラッシュアップしておきます。経理が得意なら日商簿記検定の一級の資格を取ったり、人事に携わっていたのなら社会保険労務士を狙う手もあります。それは自分の“含み資産”を顕在化させることにつながります。

そこで50代に入ったら、一度詳細な履歴書と職務経歴書を書くことをお勧めします。いわば、会社人生の棚卸しを行うわけです。すると自分自身でも、すっかり忘れ去っていたことが思い出されるはず。「ああ、あのときはあんなアイデアを捻り出して、仲間と一緒に事業を立ち上げたな」などと、自分の強みを再発見できます。

もう1つ、周囲の人から自分のことを“360度評価”してもらったらいかがでしょうか。奥さんや仲のいい同僚でも構いません。

「意外と聞き上手だ」とか「粘り強い」といった長所がわかればしめたもの。それを履歴書の長所の欄に書き込んでください。

なかには、思い切って独立・開業することを考える人もいるようです。しかし、その実現は転職よりはるかに困難です。その業種や業態でプロとして認められる能力に加え、資金や人脈も不可欠です。失敗したら、老後の蓄えすら失いかねません。50代からの人生設計の再構築は容易ではありません。

「一度ぐらい自分の会社を興してみたい」程度の気持ちなら、独立・開業は諦めたほうが無難です。

経営環境も雇用情勢も悪化しているいま、50代の転籍・転職はきわめて難しくなっています。おそらく、希望する進路に行ける人は、10人に1人といっても過言ではないでしょう。

私の座右の書『論語』では50歳は「天命を知る」ときです。できれば、私心を捨てて、世の中のために生きようという年齢かもしれません。それなのに、リストラ、転籍は不本意なことだと思います。けれども、そこで与えられた仕事を“天職”だと受け止めて、前向きに取り組んでいけば、その先の道は必ず開けてくるはずです。

(岡村繁雄=構成 撮影=南雲一男、澁谷高晴、大塚一仁)
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