「ゴルディアスの結び目」を防ぐには

さて、今度はよい方法、誰にとっても役に立つ方法を紹介しよう。それは「ゴルディアスの結び目」になる社員を一人もつくらないことだ。リーダーやマネジャーは、謎を抱えていてはいけない。一人ひとりの社員がやっていることを、その結果だけでなく過程も把握する必要があるのである。

すべての社員に明確で、整理され、標準化された情報管理体系を持つ、引き継ぎプランを作成させるために、職務記述書を書こう(もしくは社員自身に書かせよう)。そしてとにかくコミュニケーションをとろう。

社員のすることをなにもかもコントロールせよと言っているのではない。それでは管理のゆきすぎになるだろう。ただ、社員が何をしているのかを把握してもらいたいのである。

解雇すべきでない社員を解雇したら、それは単に間違った決定であるだけでなく、不当な行為でもある。そして、それは少しの努力で防ぐことができる。

16世紀のユダヤの神秘主義者、イツハク・ルリアが語った美しい挿話がある。

ルリアによれば、神は世界創造に使うために、天上の光をいくつかの特別な器に入れた。だが、神の光は器に閉じ込めるには大きすぎたので、器は粉々に砕け、光の破片を世界中にまきちらした。その失われた光を集めることで世界の不完全な個所を埋めることが私たちの務めである。それは世代から世代へと受け継がれる仕事、決して終わることのない仕事なのだ。

私たちも、会社の不完全な個所を埋めるという複雑な仕事、何世代もかかるかもしれない仕事を進めるにあたって、光を入れるもっと頑丈な器をつくろう。そうすれば、たとえそれが粉々に砕けたとしても、少なくともより簡単に破片を集められるはずだ。

(翻訳=ディプロマット)