酢のターゲットを「女性」「若年層」へ舵を切る

2011年に話題になった「紅酢」。韓国の食品メーカー「大象(デサン)」が製造販売する飲用酢ですが、誕生が2005年7月のことですから、その歴史は決して古くありません。しかし、韓国の飲用酢マーケットでは、すでに7割近いシェアを獲得しており、韓国人の5人に1人が飲んでいるとも言われる強いブランドです。

日本で発売が始まったのは2010年の4月のことです。韓国の人気アイドルグループKARAが起用されている広告を見た方も多いかもしれません。「あー、韓流ブームの流れに乗ったのね」と思う人も多いではないでしょうか。もちろんそうした側面があるのは間違いありません。けれども興味深いのは、日本においては「飲む酢」は昔から存在していて、2005年ごろをピークに、市場は停滞・縮小の傾向に向かっていたということです。そんな状況において、ただ「韓流」というだけで商品が売れるものでしょうか?

実は、紅酢は商品のメッセージ、そしてターゲットを「ずらし」ているのです。日本においては、黒酢をイメージすればわかるように、飲用酢のメインターゲットはシニア層であり、期待される効能は「健康」です。具体的には「血液サラサラ」とか「疲れにくい」といった価値でしょう。一方で、紅酢がメッセージとして掲げているのは、ずばり「美容」です。この美容効果を打ち出せば、女性全般がターゲットになりますが、中でもそれまでの黒酢では取り込めなかった若い女性に強く支持されているのです。この流れがあるからこそ、「若くてキレイ」のシンボルであるKARAが登場しているわけです。

この「ずらし」は、すでに一定のポジションを確立しているブランドや商品カテゴリーが、その要素の一部分を変える(=「ずらす」)ことで、新商品・新カテゴリーとして生まれ変わることを意味しています。

ここで述べたことは、当たり前と言えば当たり前のことですが、ともすると紅酢のヒットは「韓流」というあまりにもわかりやすい文脈の中で処理されて、わかった気になってしまいがちです。けれどもその背景をきちんと見てみれば、すでに確立している飲用酢マーケットの中で、「健康→美容」、「男性→女性」、「中高年→若年」というように、明確にずらしの戦略が実行されていることがわかります。韓流はそれを強烈に後押しする要因であると捉えた方がより正確と言えるでしょう。