僕は100万%運命論者

なぜ岩瀬は、損とわかっていながら政治問題や社会問題について発信を続けるのだろうか。

岩瀬だけではない。G1サミットの会場には、東日本大震災の被災地支援を黙々と続けるオイシックス社長の高島宏平、自らは報酬を取らずに理想の学校づくりに邁進する元ユニセフ職員の小林りん、戸羽太市長の懇請を受けて岩手県陸前高田市副市長になったキャリア官僚の久保田崇といった30代のリーダーが顔をそろえていた。

いずれも岩瀬に劣らぬ実力と経歴の持ち主である。彼らは本業に力を尽くすのはもちろん、人のため、社会のために並外れた情熱を注いでいる。そのありようは、40代以上の先行世代とは明らかに異質といっていい。

85歳の老大家・野田に遠慮したからか、岩瀬はこのとき、ついに明確な答えを述べなかった。行き暮れて立ち尽くしているように見える日本を、彼らはどこへ導こうとしているのか。30代リーダー一人ひとりを訪ねて、真意を確かめたいと思った。

まずは財政破綻のタイムリミットとされる「2020年」をとりあえずのメルクマールとし、彼らが見ているビジョンを共有しよう。

G1から3カ月後の新緑の東京。ライフネット生命本社で岩瀬と会った。途中、人生観の話になった。

「僕は運命を信じています。それはもう100万%、運命論者(笑)。この世の中で果たすべき役割みたいなものをみんなが持っていて、それが何なのかを発見していく。そういう感じじゃないかと思うんですよ」

明晰な言葉遣いをし、あくまでもロジカルな岩瀬が運命論者であるというのは少し意外である。しかし経歴を見れば、うなずけるところがある。

順調な道を歩んできたように思われがちだが、岩瀬の人生は案外曲がりくねっている。東大在学中に司法試験をパスしたが、法律家の道を捨ててコンサルティング会社に就職する。そこから外資系のファンドへ転じ、ハーバードへ留学。帰国後に日本生命出身の出口治明(現ライフネット生命社長)と出会い、それまで関わりのなかった生保業界に飛び込んだのだ。