2012年8月14日(火)

同期入社で出世する人、しない人

プロサラ式 仕事のお悩み相談室【17】

PRESIDENT Online スペシャル

著者
俣野 成敏 またの・なるとし

俣野 成敏

1993年、シチズン時計株式会社に入社。大企業の安息の日々もつかの間、社の赤字転落によって30歳でリストラ候補になり、転職、起業の余地がないダメ社員に未来はないと一念発起。役職経験・小売経験・有力人脈を一切欠いたまま、メーカー直販在庫処分店を社内にて起業し、老舗メーカーの古い価値観を逆風に受けながら、30代の内に年商14億企業に育てあげる。その功績が認められ、33歳で現役最年少の役員に昇進し、さらに40歳で本社償還、史上最年少の上級顧問に就任する。この体験を元に執筆した著書『プロフェッショナルサラリーマン』(プレジデント社)は図解版と合せ、シリーズ累計11万部のベストセラーに。中国語版、韓国語版の出版が決まっている。2012年6月、同社を退職。現在、複数の事業を経営する傍ら、サラリーマンの自己実現を応援すべく、社会人や大学での講演、執筆活動等に取り組んでいる。

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俣野成敏 撮影=尾関裕士
Q 先日、酒席で上司に「実はお前は入社試験の成績がビリだった」とバラされ、少なからずショックを受けました。早くも差がついていたようですが、この先のサラリーマン人生で挽回することはできるでしょうか。(ビールメーカー勤務、男性、30歳、入社5年目)


A それはショックでしたね。でも採用基準をクリアして入社したことに変わりはないのですから、入社試験の点数自体を気にする必要はないと思います。入社するために行う偏った儀式が、その後の長いサラリーマン人生の成果を保証するわけはないのですから。

とはいえ、サラリーマン生活も後半になってくると、望もうと望むまいと、偉くなる人とそうでない人の差は、残酷なくらい明白になってしまいます。同じ年に同じ採用基準で入社した人たちが、何年かたつと取り返しがつかないくらい差が開いていくのは、一体なぜなのでしょうか。

僕は採用面接をするとき、応募者によくこう尋ねます。

「同じ採用基準で、同じ会社に入社したのに数年後に差がつくのは、どうしてだと思いますか?」

するとだいたいみんな、「一生懸命さが違う」などと答えます。それもそうなのですが、僕の考えるもう少し具体的な答えは次の2つ。「当たり前のレベル」と「例外対応力」が違うことです。

『当たり前のレベル』が違うとはどういうことでしょうか。

誰だって、自分なりに当たり前にやるべきことをやっています。でもAさんとBさんでは「当たり前」のレベルが違うことはよくあります。

たとえばお店で買い物を終えたお客様をお見送りするとき、Aさんはお店を一歩出たとたん、きびすを返して店内に引っ込む。でもBさんはずっと店の外に立って、お客様の背中が見えなくなるまで見送り続ける。Bさんにとってはそこまでするのが「当たり前」だからです。

Aさんはそれを見て、「なんでそんな意味のないことをするんだろう」と思うかもしれない。でも幼い日に自分が初めて小学校に登校した日、きっと親はランドセルをしょった背中が見えなくなるまでずっと見送っていたはずです。本来のお見送りとは、相手が気づいていようがいまいが、姿が見えなくなるまで文字通り見送るということなのです。本来はそういう意味といえども、実務ではそうはいかない業態もあるでしょう。しかし、本来の意味が分かっている人と分かっていない人で差がつくのです。

そんなふうにお客様を見送る姿を、店の前を通る人はちゃんと見ていて、「あの店員さんはなかなか感じがいい」ということになる。良い意味で違和感を覚えるわけです。この瞬間、わずかとはいえAさんとBさんの差が開きます。僅差ではあるものの、これが来る日も来る日も蓄積していくのです。

もうひとつ「当たり前」のレベルが違う例を挙げましょう。僕は昔、あるカリスマ美容師に尋ねたことがあります。

「カリスマ美容師と、そうでない美容師の差はどこでつくのですか?カリスマになっていく人の特徴はありますか?」

「技術力とか天性のセンスとかいう理由で最初から結果は見えている」というような答えを想像していましたが、彼はこう言いました。

「そんなの簡単だよ。シャンプーで指名をとれる人だよね」

カットのとき美容師を指名することはよくありますが、シャンプーの指名はあまり聞いたことがない。でもすごくシャンプーがうまいと、そんな仕組みがなくてもお客様から「ぜひあの人に」と指名されるようになるというのです。

美容師にとってシャンプーは、いわば誰がやってもあまり差がつきそうにない地味な仕事です。でも将来カリスマになる人は、気持ちのいいシャンプーのやり方を徹底的に研究するし、お客様との会話をメモしておいて、次回の来店時に、「あの映画、面白かったですか?」と話しかける。そうするのが当たり前だと思っているからです。

こんなふうに毎日やっていることの小さな差が、3年後、5年後、10年後に、圧倒的な差になっていくのです。

周りの人が嫌々やっている仕事であればあるほど、抜きんでるのは簡単です。ヘアスタイリストとして美容学校に数年間通って技術を身につけた人が、営業時間中にはハサミを持たせてすらもらえない。この瞬間をどうとらえるかです。

「あ~、シャンプーやるために専門学校まで通ったわけじゃないのに……なにやってるんだろ、俺」と思いながらシャンプーする人と、「この仕事はスタイリストになったら新人に譲らなくてはならない今しかできない仕事。ハサミを持たなくても指名をいただけるような気持ちいい接客を今のうちに身に付けよう」と思う人。あなたならどちらの人にシャンプーしてほしいでしょうか?

同期と差がつくもう一つの要因は、「例外対応力」の有無です。

駅員がもっとも嫌がる仕事のナンバーワンは、なんだか分かりますか?夜勤でも、酔っぱらいの相手でもなく、「有人改札」なのだそうです。自動改札の脇で、自動改札を通れない人のためにスタンバイする係。あの窓を叩く人は全員が何らかのトラブルを抱えています。つまり有人改札係は、例外に対応するのが仕事なのです。

お客さんは急いでイライラしている人、路線や乗り換え方がわかっていない人、外国人、お年寄りなど「例外」ばかりなので、神経がすり減るのだといいます。つまりそれだけ、僕たちはマニュアルに載っていないこと、上司から教えてもらっていないこと、いままで経験したことがないことなどに対応するのが苦手ということなのでしょう。

しかし「例外」のときこそ、どんなアクションをとるかで差がつく。なぜなら人間の本性が出るのは、予想外のことに直面したときだからです。教えられたことをその通りに再現するだけなら、人間の本質は出にくいけれど、そうでないときにこそ、人間の中身が試される。

そんなときでも基本的に相手の役に立とうという方向で努力できる人と、例外に出くわすと思考停止する人とでは、大きな差が開くのも当然かもしれません。

仕事のレベルが上がれば上がるほど、毎日が例外対応みたいな世界になります。しかも社内の周りに相談できる人が減ってくる。そうなった時に面白いと思える人になるには、例外が例外的なうちに場慣れしておくに越したことはありません。

「『当たり前』のレベルを上げる」「例外対応能力を高める」。この2つを実行していれば、たとえ入社試験の成績が最下位だろうと時間を味方につけて最高位になることは充分に可能です。ぜひお試しください。

※本連載は書籍『プロフェッショナルサラリーマン 実践Q&A』に掲載されています(一部除く)

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