歴史的安値に高まる危機と警戒感

PANA=写真

2000年には3540円の値を付けていたNECの株価が歴史的な大暴落を記録している。7月下旬には、データが確認できる1977年以降初めて100円を割り込んだ。現在100円台には回復したものの、破綻予備軍の株価が続いている。さらに金融機関などが企業の信用リスクを取引するCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)市場ではNECのプレミアムが上昇し、「危険水域」といわれる400bp(ベーシス・ポイント)を6月に突破すると、7月には東京電力の501bpを超えた。まさにNECにとっては、創業以来の危機だ。

100円割れのきっかけとなったのは米大手格付け機関「ムーディーズ」による格付け見直し。同社は7月20日、長期債務と発行格付けを見直し「Baa2」の「安定的」から「ネガティブ」に変更したことが発表されると、株価は100円を割り99円まで下落。7月末まで100円台と90円台の間を行き来する攻防が続いていた。

ムーディーズのアナリスト、広瀬和貞氏は社債の格付け見通しの変更について次のように説明する。

「株価の下落とは直接関係はないと思いますが、社債の格付け見通しをネガティブに変更したのは、収益性と財務の回復がムーディーズの想定よりも遅れていることを反映したからです」

では、なぜNECの株価が低迷しているのか。SMBCフレンド調査センター主任研究員の酒井洋氏は次のように語る。

「NECは稼ぐことのできる部門がなくなり、バランスシートが傷んでいる。さらにバランスシートが傷んでいるのでエクイティーを調達する必要性が高まっていると市場では見ている。資産が劣化し、収益力の弱い企業が増資すれば、1株あたりの株主価値は減少する。それが株価に反映し株価が大きく下げているのではないでしょうか」

つまり「収益性と財務」に問題があると判断しているようだ。