彼女によれば「女性ドライバーは飛び込み営業しても断られにくい」というメリットがあるとのこと。大西さんにとって忘れられない営業の成果は、ほぼ1年がかりで鮎の養魚場経営者を口説き落としたことだ。

「飛脚クール便で全国に鮎を送りませんかと提案しました。なぜ1年近くもかかったかといえば、宅配便の場合、運輸業者がよほどのミスでもしない限りお客さまは業者を変えようとは思わないのです。私は時間をつくっては養魚場へ寄り、世間話をした後、『一個でいいです。一度試してみてください』と話しました」

熱意が通じ、社長は大西さんに荷物をひとつだけ託した。彼女は預かった荷物が届け先に着くところまで確認した。そして結果をフィードバックしたところ、丁寧な仕事に感心した社長は、以後鮎の配送をすべて佐川急便にまかせてくれた。

大西さんは「値段を下げたからといって仕事をいただけるとは限りません」と言う。

「お客さまは、荷物が他社便より早く届くか、壊れたりキズがついたりしないかを厳しくチェックします。配送コストが安いことより、運輸業者が信用できる相手かどうか、長くつきあえる相手かどうかを見ているのです」

「決めトーク」は
「当社を使っていただければ、トータルな物流パートナーとしてずっと一緒にやっていきます」。一度受注したら終わりではないことが伝わるよう心がけている。

自己啓発の仕方
部下はほとんど男性で年上。男女の脳の違いについての本や話し方の本を読んで、褒め方や叱り方を勉強している。

優先順位のつけ方
ドライバー時代は、時間指定のある荷物から優先して届けていた。それ以外でも、早く確実にお客さまの手元に荷物が届くことを重視している。

服装、化粧の仕方
荷物の積み下ろしを手伝うこともあるため、ふだんは会社支給の縞々シャツに青いウインドブレーカー、紺のパンツ、スニーカー。化粧はごく薄め。

記憶に残る失敗談

特にない。高校時代ソフトボールの選手だったとはいえ、男性と比べると一度に持てる荷物が少ないため、「配達が遅い」とクレームを受けたことも。

※すべて雑誌掲載当時

(笹山明浩=撮影)
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