新人には短期での達成感が必要

困った新人に対しては、OJTを通じて叱って育てる姿勢も求められるという。

ウィルPMインターナショナル代表
石田 淳
日本の行動科学(分析)マネジメントの第一人者。行動科学マネジメント研究所所長も兼務。近著に『3日で営業組織が劇的に変わる 行動科学マネジメント』『行動科学で人生を変える』など。

「この場合、新人が『なぜ叱られたのか』を明確にすべき。『ここを直せば自分は伸びる』とわかれば、人は報酬を求めるので、そういった方向に行動します。ただし、なかには対人関係に慣れていない人もいるので、ストレス耐性を見極めつつ、頭ごなしに叱ることは避けたほうがいいでしょう」(角山教授)

山中氏は新人について、「若い分夢があり選択肢も多いので、的外れな叱り方をすると『ほかにも会社はありますから』と辞めてしまうかもしれません。ですから、私たちが彼らに求めていることを丁寧に説明し、その目標に向かうよう指導しています」と苦労を滲ませる。

石田氏も行動科学マネジメントの観点から「求める結果と必要な行動を明示すること」が新人には効果的な叱り方なのだと述べる。

「さらに、短期的に達成感を得られるタスクを与えることです。チェックリストやマニュアルを使い、自分がどれだけ成長できたかマイルストーンを置くことで、ビジネスマンとしての素地を速く整えることができるのではないでしょうか」

なかなか踏み込みづらい年上部下への対処法はどうだろうか。

「注意が必要な相手です。ねぎらいと叱りを適度に組み合わせて話を切りだしたり、相談する姿勢で臨むと効果的ではないでしょうか」(石田氏)

「頭ごなしの口調では反発を招くだけ。言葉を選びつつ『あなたの行動で仕事に支障をきたしている』ということや、目標を達成するために修正してほしい内容を伝えること。冷静に原因と結果を述べれば、年上のプライドもありますから、行動は変えられます」(角山教授)

目標になかなか到達しない「お荷物部下」を叱る場合も、「PDCAを一緒にチェックすれば修正点も見つかりやすい。勤務態度が悪い部下なら、若い世代に対する偏見はないかなど、自分にバイアスがかかっていないか確認したうえで、注意を促すべきです」(角山教授)。新人であれば、社会人としての行動をマニュアル化して教えておいてもいいだろう。

どういった相手であれ、立場や心情、行動を掘り下げて注意を促せば、叱りを単なる罰ではなく、自分自身を成長させてくれるカンフル剤と捉えてもらうことは不可能ではない。叱り方次第で、部下は成長もするし、モチベーションを下げてしまうこともある。上司なら誰でも頭ではわかっていることだ。ところが感情に流されるままに怒ったり、先を見越さずに叱責してしまう。叱ることには、翻って上司の側にも自戒が求められる。

マネジャーの仕事は、チームの方向性を定め、目標に向かって部下に進んでもらうことだ。そのために、叱るという手段をうまく使っていきたい。

※すべて雑誌掲載当時

(梅原ひでひこ=撮影 AFLO=写真)
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