富士通のブランドはまだまだ弱い

国産コンピュータ会社、富士通。35年に親会社の富士電機から電話部関連事業が分社してできた富士通信機製造は、67年に富士通に社名を変更して現在にいたる。ちなみに富士電機は23年に古河電気工業とドイツのジーメンス社が、発電機・電動機国産化のため、富士電機製造を設立したことで誕生しており、社名の由来は、古河の「フ」と、ジーメンスの「ジ」を取ったフジ(富士)からくるものだ。そして現在、高い収益率で脚光を浴びるファナックは、72年に富士通の計算制御部から独立した富士ファナックが前身である。

現在、我々の持つ富士通のイメージは、コンピュータを中心としたICT(情報通信技術)の提供会社というものだろう。しかし、世界の人々が富士通に対し、そうしたイメージを持っているわけではないようだ。山田は、こう語る。

「富士通をコンピュータ会社と思っている国は、実は少ないのです」

日本人にとっては意外な事実である。英国、ドイツなど欧州の主要国において富士通は、コンピュータの汎用機時代から進出していたこと、コンシューマ向けのパソコンなどの商品が浸透していることもあって、コンピュータ会社だと認識されている。ところが、山田によれば、

「東欧や中東などでは富士通は、完全にエアコンとスキャナーの会社であってコンピュータ会社として捉えられていない」

というのだ。社員17万人、全世界に拠点を持ち、11年度末の決算では、売上高4兆4675億円、営業利益1053億円を計上するグローバル企業であるにもかかわらずだ。

山本正已社長の分析は冷静そのものだ。

「富士通のブランドはまだまだ弱いところがあるんです。オールマイティに全方向で世界でやれるほどの力はまだ残念ながらない。しかし、富士通の技術力をある程度知ってくれているところ、さらに今後、国づくりの柱に科学技術を置きたい国々にとって、富士通をベンダーとしてみたときに、非常に方向性が合っているのではないかと期待しています」

(文中敬称略)

※すべて雑誌掲載当時

(大沢尚芳=撮影)
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