2012年8月17日(金)

シシトウ――たまに当たってしまう激辛のやつはストレスが原因

dancyu 2012年9月号

福地享子=文
【つくり方】
シシトウを胡麻油で炒め、シナッとしたら醤油、好みで味醂少々、チリメンジャコをざっと混ぜて出来上がり。冷蔵庫で2~3日はもつので、たくさんつくって常備菜に。つまみ、箸休め、冷やし茶漬けの友にも最高。

シシトウは、野菜界のロシアンルーレットだそうな。同感、まったく異議なし。2本、3本……ワッ、やられたぁ。ヒーッ、なによ、この辛さったら。

そんな目にあっても、週3~4回は使っている。ビタミンが期待できる。加熱調理が短時間、というのもうれしい。焼きシシトウなんて、ホントありがたい。時間がないのに、おかず3品同時進行の極限状況下には、まずこれ。焼き網にのせて、横目でチラチラ見ながら、ほかのことに手を動かせる。焼け焦げもご愛嬌。むしろそのほうがおいしい。マヨネーズ、かつぶし、もみのり、スダチと、ほかのバランスで味を補えば、よし。

これで、あのロシアンルーレットの恐怖さえなければ……。

なんで辛くなるのか。ホットなやつがこっそり入り交じっているのか。野菜の種の総元締め、タキイ種苗に聞いた。

結論はストレス。野菜だって、いっぱいストレスを抱え込むらしい。ストレスの原因は乾燥だ。高温乾燥、水不足、さらに肥料不足が重なり、辛味成分のカプサイシンが生成されてしまうという。

なんだか人間社会そっくり。潤いがなくなり、愛情という肥料がなくなり、凶暴な事件が起きる。そこにいくと、カプサイシンとやらでひとを驚かすぐらい、かわいいもんだ。

辛さが生まれることについては、ヤッチャ場でも、いい話、聞いたな。

「先祖返りしちゃうんだな、つまり」

胡椒を求めて大航海へ乗り出したコロンブスが、アメリカ大陸で見つけたのがトウガラシ。辛いヤツ。胡椒のかわりにヨーロッパに持ち帰り、世界へ広まった。日本へは江戸時代に伝わり、七味唐辛子に加工されるなどしてブレイク。その後、明治時代になって、品種改良による辛味のないヤツが入ってきたが人気なし。シシトウが普及したのは戦後になってからだ。もともとは、ホットなヤツ。それがストレスが原因で、先祖返りするという解釈。なるほどね。

乾燥を防ぐためには、水やりをこまめにして土壌の乾燥を防ぎ、肥料を効かせることだ。ただ、残念なことに、辛味があるかないかを、外見からは判断できない。最大のシェアを誇る高知県内有数の産地、南国市の選果場のベテランの眼力をもってしてもむずかしいらしい。

しかし、このところ、ホットなヤツに出会う回数はめっきり減ったようだ。私も、この春以来、ただの一度も的中したことなし。天の恵みか。いや、食べることしか能のない私に、そんなことあるはずもなく、ひとえに生産農家のシシトウにかける濃やかな愛情、栽培の苦心があってのことだ。

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福地 享子

かつて女性誌の編集者、その後、築地の鮮魚仲卸「濱長」の看板ネエサンとして大活躍。現在は築地の書庫「銀鱗文庫」役員。ここを拠点に、築地を走り回っている。