コレステロールは悪者ではない

「健康長寿=粗食」と誰もが頭に思い浮かべるはずだ。野菜を中心とした食生活で、できるだけ肉を控え、カロリーをおさえる……。ところが、こういった食生活は健康長寿とはほど遠くなると、桜美林大学大学院教授の柴田博教授はいう。

それに、年齢を重ねてもなお活躍している著名人でいえば、聖路加国際病院理事長の日野原重明氏(100歳)がステーキ好きなことが知られている。作家の瀬戸内寂聴氏(90歳)などもよく肉を食べるとか。

生涯現役・健康長寿と肉食は密接な関係がありそうだ。肉食と健康について研究を重ねている柴田教授も、75歳にしてさまざまな大学での講義、講演、そして執筆活動と多忙な日々を送っている。肉食がなぜ、健康にいいのかを解説していただいた。

「人類は170~200万年前に誕生し、農耕が始まる1万2000年ごろまで、ずっと肉食中心で生きてきました。それに、日本人の平均寿命が伸びたのは、昭和40年代で肉を食べることが生活に定着してきたころ。私の研究でも、100歳以上の長寿者は肉をよく食べています」

肉を食べると、体に必要なアミノ酸が補われて、血管が丈夫になる。すると脳卒中のリスクが減り、動脈硬化、糖尿病、高血圧症、心臓病、うつ病、貧血なども予防できるという。とかく日本では悪者扱いされる、コレステロールは、実は必要なものだと柴田教授は続ける。

「肉が健康長寿に不可欠と言うと、“コレステロール値が高くて”と敬遠する人がいます。食品において、コレステロールが目の敵にされている傾向が強いですね。しかし、コレステロールは、細胞の素材となりホルモンの源になるなど、必要不可欠なものなのです。欧米諸国のように、血中コレステロール値が高く、心筋梗塞などの死亡率が日本の5~7倍も高い国々でコレステロールが悪者扱いされるのはわかりますが、日本ではその必要はありません。まず、日本はコレステロールの摂取量が欧米諸国に比べて低いというデータもありますし、死亡率の第一の原因がガンだから。ちなみにガンはコレステロール値の低い人に多いことがわかっている病気です」

こういった背景を踏まえると、日本人はもっと肉を食べたほうがいいようだ。目安は1日80gといわれている。といっても肉だけ食べていればいいのではなく、野菜、魚、穀類などをバランスよく食べることが前提だ。また、肉も牛、豚、鶏など様々な種類を選びたい。

「これだけ食べていれば大丈夫、という食材はありません。食事は楽しく、みんなで、バランスよく、が理想。そういった食生活を続けることが大切なのです」

柴田博(しばた・ひろし)
桜美林大学大学院老年学研究科教授/日本応用老年学会理事長
1937年北海道生まれ。北海道大学医学部卒、医学博士。東京大学医学部、東京老人医療センター、東京都老人総合研究所を経て、現桜美林大学名誉教授、人間総合科学大学保険医療学部教授、日本応用老年学会理事長。著書に『肉食のすすめ』(経済界)など多数。

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