特別な努力ではなく
「なるべく」でいい

──その他、忙しいビジネスパーソンでも実践できそうな、健康管理のポイントを教えてください。

やはり運動ですね。体を動かすことは、単なるダイエットやメタボ予防になるだけでなく、歩くことで「腸も動かす」というメリットがある。これは、大腸がんの予防に有効なのです。

運動というとハードルが高そうなイメージがありますが、特別なことは必要ありません。思い立ったら、通勤用の靴をビジネスシューズからウオーキング用に変えてみるのもいいでしょう。革靴よりも歩きやすくなるだけで、気持ちもずいぶん前向きになるはずです。そうして、少しの距離なら自家用車やタクシーを使わずに歩く、エスカレーターではなく階段を使う、帰宅時に1駅前で降りるようにする──。そんな、ごく小さな工夫の積み重ねが大事です。

夜は、就寝の3時間前までには食事を済ませておき、ぬるま湯の半身浴で体を温めましょう。昼間に体を動かすことによって適度な疲労があれば、充実した睡眠にもつながります。自分にとって、無理なく続けられる環境を整えていく。それが、継続するためのポイントだと思います。

正しい情報をもち
楽しめる生活を

──最後に、ビジネスパーソンが心がけておくべきことについてお願いします。

いくら健康のためとはいっても「○○してはダメ」「○○は食べてはダメ」では、人生は味気ないですよね。摂取することで、体にどんな影響があるのか? を知ってさえいれば、自然に食べ過ぎや飲み過ぎを自制できるようになるはずです。あとは自由においしいものを食べ、気の置けない人たちと語らい、音楽や芸術などを楽しむ。こうしたリラックスする時間をもつことも、健康的な生活には不可欠です。何ごとも適度に。要は、バランスですね。

女性は健康意識が高く、体に何か違和感があればすぐ受診します。一方、男性はなかなか腰が重い。家族に背中を押されて、あるいは出血を伴う排便などであわてて来院される。そんな傾向があるように感じています。私の医院では大腸の内視鏡検査も行っていますが、時間にして15分程度。鎮痛剤を使用しますから痛みはありませんし、保険診療ですから費用も手ごろです。「痛そう」という印象ばかりが広く行き渡ってしまい、こうした正しい医療情報が伝わっていないのが現状だと思います。

1番いいのは、信頼できるドクターの言葉に従うことです。たしかに「忙しくて時間がない」というのも理解できますが、健康な心身あっての仕事人生。「なんだかいつもと違う」が続いたら、自分で調べて解決しようなどとせず、早めの相談を心がけてください。気づいたときが、自分を変えるチャンスですよ。