「ゲゲゲの女房」型の正反対が、「管理」の強い「プロデューサー」型である。米国では、地位のある男性は挨拶のときに、「今の自分があるのは彼女のおかげ」とパートナーである妻をほめたたえる風習がある。これは「おべっか」ではない。ビル・クリントン元大統領の妻ヒラリー・クリントンやバラク・オバマ大統領の妻ミシェル・オバマは、いずれも弁護士資格を持つキャリアウーマンで、ある時期から夫の政治活動を猛烈に支えるようになった。

日本でも菅直人元首相の妻菅伸子さんは舌鋒鋭い「姉さん女房」として知られる。また、お笑い芸人の太田光氏の妻で所属事務所社長の太田光代さんや、デザイナーの佐藤可士和氏の妻でマネジャーの佐藤悦子さんも同類型だろう。

しかし日本ではまだ希有な例にすぎない。政治家やクリエイターといった職種ならば夫婦での協働は活きやすいが、組織のなかで仕事をする場合には、日本では職場と会社の距離が遠い。それなのに「早く課長になれ」「もっと英語やったら?」と尻をたたかれても、かえって男性はくじけてしまう。「最強」の味方である「プロデューサー」型の妻と結婚すると、一見心強いようだが、もし応えられなかったら……。そう思って委縮してしまうリスクもあるのだ。

起業家男性を対象に「婚活」に励む35歳・総合職のNさんは、「今まで企業で働いて得たノウハウで、彼の会社を成功させる手助けができると思うんです」と言う。残念ながら、これはキャリア女性の陥りがちな罠だ。取材する限りでは、妻に自分のテリトリーである会社で「思い切り手腕を振るってほしい」と考えている男性はいない。

実際、取材した「セレブ妻」たちは、「能ある鷹は爪を隠す」タイプが多く、「やればできるけれど、夫に望まれない限り仕事には口を出さない」というスタンスを貫く人が多かった。キャリアを活かすことよりも、「いつ彼が帰ってもいいように、15分で食事を出せる支度が常にしてある」というスキルが求められるようだった。

それでは高学歴高収入キャリアカップルの「同類婚」型はどうだろうか。国立大学を卒業し、テレビ局に就職した30歳のHさんは、老舗企業の3代目社長と結婚後、しばらくして退職した。その理由を次のように話す。

「2人とも仕事をしているときはストレスでケンカばかり。家庭内に社会的責任の大きな仕事をしている人が一人いたら、一人はバックアップに回らないと」

高いキャリアを持つ男女の「同類婚」型では、どちらかが折れなければうまくいかない。特に忙しすぎる2人に子供ができると、夫婦仲には緊張感が伴うようになる。「妻が自分より出世したら」という重圧に苛まれ、実際に妻の稼ぎが増えてセックスレスになったというケースもあった。