2012年8月8日(水)

銀座ママの証言「会話、飲み方、しぐさで決まる」【1】

PRESIDENT 2010年10月4日号

著者
山本 信幸 やまもと・のぶゆき
ジャーナリスト

法政大学経営学部卒業。自動車会社の広告代理店などを経て独立。経済、金融、ITなどを中心テーマとして活躍中。『新装開店「キャバクラ」の経済学』ほか著書多数。

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ジャーナリスト 山本信幸=文 小原孝博=撮影
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出世する男は酒席でも本気で遊ぶ

日本で最も単価の高いクラブが軒を連ねる東京・銀座。最近では、「社用族」の姿はほとんど見られない。現在の優良顧客は会社オーナー、開業医や弁護士のような自営業、芸能人、そして不況とは無縁な代々続く資産家だという。クラブでは男性スタッフのことを「黒服」と呼ぶ。長年、銀座で働くある男性スタッフはこう話す。

「昔の会社経営者は銀座で取引先を接待するのが当たり前でしたが、リーマンショック以降は、不景気の影響もあり、接待を目的とした顧客は目に見えて減っています」

2人で10万円以上という会計を笑顔で支払えるような人物は、すでに成功を収めているか、いま出世の階段を着実に上っているかのどちらかだろう。ただし、その中にも「濃淡」がある。成功者の地位を長く維持できるか、数年のうちに手放してしまうか。出世階段を上り詰めることができるか、途中で転落してしまうか――。そうした将来の姿は、酒の飲み方にも表れているようだ。

銀座七丁目に店を構える高級クラブ「泉(せん)」は、約60坪のフロア面積を持ち、銀座では数少ない「大箱」のひとつだ。毎晩、30人前後のホステスが待機している。料金は、セット料金が一人約4万円、ボトルは別途2万円から。一般の会社員には遠い世界だ。

クラブ泉 ママ
高藤優子

1965年生まれ。23歳のときに千葉でホステスとして働き始める。子育てのため一時引退するが、32歳のときに六本木で復帰。銀座の他店を経て現在に至る。

同店の高藤優子ママは、20年という水商売歴の中で、出世していった男、消えていった男を数多く見てきた。

「出世したお客様には共通した3つの条件があります。私たちのような業種の者に対しても、真面目であること、誠実であること、律儀であること。人間の基本ができている人と言い換えられるかもしれません」

優子ママの「真面目」とは、どうやら「本気」と同義語のようだ。

「子供の頃は皆さん本気で遊んでたでしょ。あの集中力には凄いものがありますよね。出世されたお客様は酒席でも本気で遊んでいらっしゃいます」

「本気で遊ぶ」というと、札束をばら撒くような豪遊をイメージするが、そうではない。遊ぶときは「脳を切り替えて集中して遊ぶ。いい加減ではなく真面目に遊ぶ」。どんなときでも集中力を発揮できることが、まず第一の出世の条件というわけだ。

誠実さも大切だ。ホステスの前では傲慢な態度を取ったり、虚勢を張るお客もいるが、出世する男は一人の女性として誠実に接する。自分に自信があるから偉ぶる必要がないし、「今度クルマを買ってやる」などと果たす気のない約束をすることもない。

「相手によって誠実さを使い分けることなんてできないから、ホステスに対して誠実なお客様は、昼間の仕事相手に対しても誠実なのだと思います」

そして「律儀さ」とは、きっちりと約束を守れることを指す。

「ホステスに『誕生日に来店して』と頼まれたら、何が何でもお店に来るということではないんです。皆さんお忙しいので、仕事の都合で約束が守れないことはある。それは仕方ないことですが、その代わりに『その日は無理だけど、明日行くよ』ともう一度約束したら、それは守るということです」

この3つの条件を兼ね備えた人物は、往々にして周りからの信頼も厚い。

「人間性が素晴らしく人格のよいお客様には、周りに素晴らしいブレーンがいて一緒に飲んでいたりするもの。それがお仕事にも好影響を与えているのではないでしょうか」

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