二宮氏は「リスク管理ができる人」と言う。これはリスクを取らないという意味ではない。

「今はリスクを冒さなくても順風満帆に経営できる時代ではないし、大胆にチャレンジすることは避けられない。状況に応じて、ある場面では緊急避難としてのリスク管理を行いつつ、ある場面では将来に向けて大胆に勝負することも求められている。長期的に利益を生み出す組織に変えていくためには、先見性はもちろん、決断力、創造性も求められている」

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これは全般的な役員候補の要件であるが、とくに研究開発職の役員候補は「自ら研究者として実績を挙げるだけではなく、優秀な研究者の発掘と育成も重要な仕事であり、研究者を一つの方向にまとめ上げていくマネジメント力も求められてくる」(二宮氏)と指摘する。

もちろん実際に役員に登用されるかどうかは“運”も左右する。部門で順調な実績を挙げていても、事業計画の見直しにより新規事業を推進する役員候補にポストをさらわれることもある。あるいは役員候補者として甲乙つけがたい場合は、社長など上層部の覚えがめでたいタイプが選出されることもあるだろう。

実際に役員・社長に上り詰めたタイプに共通する資質とはなんだろうか。二宮氏はまず前提として「周囲から安定的に高い評価を得てきた人」という。

「たとえば営業系では、突然、何かのきっかけで急激に実績を伸ばしたというのではなく、人事評価でいえば、SABCDの5段階評価でコンスタントにAを取り続けている安定した評価を得ている人。逆にいえば、そういう人を役員に登用する場合は周囲から異論が出ない。たとえばその中には、課長になる前ぐらいから『あいつは課長の仕事をしていた』と言われていた人もいる」

若いときからコンスタントに高い評価を受けている人の共通点として同様の指摘をするのは大手ゼネコンの役員である。