筆者の知り合いに、ある毛並みのよいアメリカ人経営者がいる。例によってリクルート市場から採用された人物であるが、価格決定や競争に耐えるコスト分析などについてはまことに雄弁、留まるところを知らないのに対し、会社の生産技術や仕入れ方式の不備に水を向けると、たちまちシラケて話がはずまなくなる。しかし収益が上がらない本当の理由は、むしろこちらにあるのだ。

しかもこの経営者は、会社で働いている一般労働者とどう話し合ったらいいか、まったく心得ていない。自分たちエリート仲間では、DCF(割引き現金流入法)、ROI(対投資利益率)、EPS、PPIC、価格弾力性などの専門用語が通じるが、現場の一般従業員にとっては何のことかチンプンカンプンである。一般従業員は「オレたちは頭が悪いからお偉がたの命令に従っていればいい」という態度をあからさまに示し、命令がこなければ、従来からの職務規定に定められているやり方を極力固守してお茶をにごそうとする。

それと著しく対照的なのが日本のトップ経営者だ。“タイヤと路面の接点”(つまり現場との接点)から第一歩を踏み出しているだけに、従業員に対しても「仕事を一番よく知っているのは君たち自身だ」と説くことを忘れない。いろいろな革新も、改良も、現場から生まれてこなければならないからである。