今、多くの企業で社員の価値観や個性まで含んだ人材把握を行い、活用する能力が減退しているという。これが原因となり社員のさまざまな不満を招いているなか、現場リーダーの果たすべき役割とは──。

個人情報保護がもたらす意思決定の制限

今、日本の企業では人材に関する情報が減少または劣化しているように思う。そのことに経営者はどれだけ気がついているだろうか。

企業内での人のマネジメントとは、基本的に、多様な人材情報に基づく意思決定の連続である。働く人一人ひとりについて可能な限り詳しい情報を集め、それを活用して意思決定をする。その繰り返しが人材活用の基本だ。

ただ、そこで使われる情報は成果や能力などの職務遂行に関連した情報だけではない。個性や人間性、好み、家族背景などに関する質的な判断が必要な情報を含めて、総合的な人に関する情報が真の意味の人事には必要になる。その意味でよい人材マネジメントは働く人に関する情報の濃密さの上に成り立つのである。

前回も少し書いたが、考えてみると、これまでの日本の雇用の仕組みは、働く人に関する総合的な情報獲得に適合的だった。例えば、長期雇用は、単に成果や職務遂行能力だけではなく、その人のもつ価値観や個性などまで含んだ深いレベルでの人材把握を可能にしてきた。もう1つ例を挙げれば、定期的なローテーションは、評価者と被評価者の組み合わせが何通りもできることで、多様な場面での情報収集を可能にしてきたのである。

こうした仕組みのおかげもあり、過去日本企業は集めた人材情報を有効に活用して、丁寧な人材活用を行ってきた。仕事の割り振り、プロジェクトリーダーの選抜、昇進など多様な意思決定を、個人の価値観、好き、嫌い、家族状況までを含んだ総合的な観点から行ってきたのである。

だが、そうした情報が失われている。または劣化している。大きく分けて4つの要因が考えられる。要因の1つは、人事制度自体の変革によって、人材把握基準が、大きく成果や能力などに集中されてきたことである。人材評価基準の成果へのシフトについては賛否両方から多くの議論がなされているが、案外、気づかれていないのは、潜在的能力を把握し、それを組織として蓄積する仕掛けが失われてきたことである。まず潜在能力そのものにあまり関心を払わなくなってきた。