実際のところ、筆者に言わせれば、多くの西欧企業はすでに戦略計画の行き過ぎで逆効果を招いている。西欧、特にアメリカでは頭脳重視の姿勢がきわめて強くなっている。人呼んで“マクナマラ症候群”とか“フォン・ブラウン・コンプレックス”とか言われるくらいだ。その前提には次のような考え方があるように思われる。「ある種の人間は、他の人間よりも知能が高い。したがって、あまり頭脳的に恵まれない人間は、知能の高い人種から命令を受けて行動する方がよい。たとえば計画立案とか職務内容の成文化を通じて“何を成すべきか”を厳密に規定してもらうべきだ」というのである。

一方、“考える人間”の方は通常、法科大学院やビジネス・スクールの出身者であるが、会社に入ると初任給がすでに多くの中間管理職に対する上限より一段以上高い。たとえば今日の代表的な一流ビジネス・スクール出身者の現給与水準は、退職間近のブルーカラー労働者、さらには現場責任者の給与よりも高い。

日本では、年功序列に基づく給与が常識化しているので、大学卒や大学院卒の学歴をもった新入社員でも頭脳の程度いかんにかかわらず、高校卒の工作機械工と同程度の給与しかもらえない。西欧の社会では、性別や人種別を越えた“雇用の機会平等”(EEO)が一応実現されているが、筆者に言わせれば、技能訓練や昇進の面でも各人の教育程度、知能程度にかかわらないEEO制度をもっと盛り込むことが、企業の業績向上のため、少なくも同程度の重要性と妥当性をもっているように思われる。