中国の工場におけるストライキが日系企業を悩ませている。なぜ日系ばかり標的にされるのか。その意外な背景と今後の対策について、現地の専門家らに聞いた。

スト権は憲法で保障されていない

中国語で「罷工潮(バーゴンチャオ)」と呼ばれるストライキの波が中国の外資系企業を中心に広がっている。報道では日系企業での発生が圧倒的に多い。

中国憲法では、公有制経済の建前から労働者のストライキ権は保障されていない。

2010年7月10日、中国の王岐山副首相は日本国際貿易促進協会の訪中団に対し「累積していた問題だが、今年に入って爆発的に起こっている」と説明したうえで、「中国の投資環境に影響を与えることはない」と発言をした。

一連のストライキ騒動の発端となった南海本田工場のストの様子。自己主張の強い、80年代生まれ以降の世代がワーカーとして地方から出てきていることも原因の一つといえる。(写真=PANA)
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一連のストライキ騒動の発端となった南海本田工場のストの様子。自己主張の強い、80年代生まれ以降の世代がワーカーとして地方から出てきていることも原因の一つといえる。(写真=PANA)

一連のストが国内外で注目されるようになったのは、5月17日に始まったホンダ系列の南海本田自動車部品工場(広東省仏山市)からだ。

従業員1900人の工場で、23歳の従業員がラインのストップボタンを押したことから始まったストは、5月22日に首謀者の2人が生産妨害で解雇されたあと、さらに過熱。白いつなぎを着て、マスクで顔を隠した従業員たちが「散歩」形式で工場内を歩き「賃上げせよ、徹底的に抗争しよう」と呼びかけている香港ニュースの映像が、ネットを通じて中国全土に流れた。

完成車工場のラインを止めるとホンダ側が発表した28日の翌日は新京報など中国国内のメディアも大きく報じた。最終的には完成車メーカーの広汽本田総経理で全国人民代表(日本の国会議員に相当)の曾慶洪氏が工場側代表として交渉の席に出て、6月1日から4日までぎりぎりの交渉を続け、従業員の800元の賃上げ要求に対し500元の賃上げで妥結。

南海本田のストについては、QQ(インスタントメッセンジャーの一種)や携帯電話のショートメールで参加呼びかけが行われ、インターネットの掲示板やSNSを通じてスト進行状況が広く伝わった。

これにより連鎖反応を起こし、6月3日にはブラザー工業二工場(陝西省西安市)、7日にホンダ系列部品メーカーのユタカ技研(仏山市)、9日にホンダロック(広東省中山市)、15日にトヨタ系列の天津星光プラスチック、17日に天津豊田合成(天津市)、18日に日本プラスト(中山市)、ホンダ系高尾金属(湖北省武漢市)、21日に広州デンソー、22日にニッパツ(広東省広州市)、29日に天津ミツミ電機、7月12日に仏山アツミテック……と広がった。