結果は図1のとおり。スタートしてまもなく酸化型ヘモグロビンが減少し、還元型が増加している。これは酸化型ヘモグロビンから酸素が脳細胞に取り込まれたため、還元型に変化したと推測される。ところがある時間を過ぎると、今度は酸化型が増加する一方還元型が減少し、この状態は体操終了後もしばらく継続している。これは脳に酸素が充分いきわたり、もっと必要であればいつでも酸素を供給できる状態、つまり、脳の高度な活動を支える環境が整っていることを示している。

同様にゆる体操のリラックス効果を「STAI」という国際的に採用されている心理テストで調べてみた。結果は図2が示すとおり、ゆる体操を行っている途中から不安状態が軽減し、その状態は体操を終えた後も続いている。

これらの結果を総合的に判断すると、ゆる体操をすることで脳にとってベストなコンディションが整い、脳が充分に活性化されると見ていいだろう。

ただ、身体の凝りを取り、ゆるめることで脳機能が向上するなら、体操じゃなくてもいいのではないか、という疑問もわくかもしれない。スパやマッサージなども身体の凝りをほぐしてくれるからだ。

結論から言えば、こうした受動的な方法によるゆるみは一時的なもので、頭をよくする効果は期待できない。たとえば、怒りや不安などの緊張状態が発生すると、その情報は即座に脳神経に伝達され、脳から身体に対して身構えるよう指示が出る。肩や内臓の筋肉に力が入るのはそのためだ。マッサージで身体をほぐしても、身体を緊張させるよう指示した脳神経の命令作用に変化がなければ、いずれ元に戻ってしまうのは、容易に想像がつくはずだ。