2012年7月20日(金)

日本を元気にする天空レストラン

dancyu 2012年7月号

文・井川直子 撮影・今清水隆宏
小林武史氏(左)と奥田政行シェフ(右)。群馬、石川、高知、山形ほか、全国の熱意ある生産者から届く野菜の力強さに驚いてほしい。奥田シェフが手に持つ料理は、そんな野菜を素直に塩だけの味つけで提供する、「農家さんの想い」。

634m。数字では実感できないが、その頂上を拝むには、限りなく空を見上げることになる。東京スカイツリーの麓では、うつむいてなどいられないのだ。

日本のこの新しいシンボルには、新しい日本を世界へ発信するという使命がある。そこに誕生したレストランが、「ラ・ソラシド」。

料理人・奥田政行氏と音楽プロデューサー・小林武史氏が肩を組み、「日本の食を元気にしていこう」と“ぶち上げた”レストランだ。

見慣れない2ショットだが、実は二人とも山形県出身。奥田シェフは山形・庄内で「アル・ケッチァーノ」を立ち上げ、地方の豊かさを全国に知らしめた張本人。同じく日本の未来の食や環境を見据え、それを支援する「ap bank」を設立した小林氏が、その活動に注目していた。

「料理と音楽は似ている。どちらも、何かと何かをつなぐ触媒的な仕事だから」

2010年に出会い、すぐに意気投合した二人が掲げるのは、「フードリレーションネットワーク」という考え方。食の生産者と、それを消費する都市の人々をつなぎ、食=いのちの循環が見える社会をつくるという大きなビジョンだ。

気づけば日本には、工業製品のような食が増えすぎていた。自分の体をつくる食べ物が、どんな素性のものなのか?

多くの日本人は、それを想像することすらさぼっていたかもしれない。そこにきて、あの3.11である。

「日本は大きな問題を抱えてしまった。でも、だからこそ今、リレーションが必要だと。全国で頑張ってつくられる食が、必要とされている場所で消費され、循環していく。“つながり”よりもう少しポジティブな思いを込めて、僕は“連帯感”だと思っています」(小林氏)

「ラ・ソラシド」はその拠点である。

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井川 直子