守れなかった部下、残る野心

滝沢さんには、前職で忘れられない苦い記憶がある。サブプライムで巨額のロスを出した会社は、優秀だった滝沢さんの部下の一人をリストラの標的にした。事をスムーズに運ぶため、直属の上司だった滝沢さんがつけた査定は、さらに上の上司によって勝手に低い評価に変えられていた。それを知った滝沢さんは上司に激しく抗議したが、逆にそれが滝沢さんの「寿命」をも縮める結果に。結局、部下とともに解雇されてしまった。

「権力を持つ人間を敵に回すと即刻クビにつながる。わかっていたつもりですが甘く見ていた。部下が再就職できたことがせめてもの救いです」

常にもっとよい給料、もっと上のポジションを求め、滝沢さんは20代からアグレッシブに外資を渡り歩いてきた。

「先のことはあまり考えず、30代まではずっと右肩上がりだった」という野心的な姿は、前出の根本さんに重なる。

だが、40の声を聞く頃、リーマン・ショックが重なり、「レバレッジをかけ続ける人生は限界」と思い知ったという。ただし、強い野心は形を変えて滝沢さんの中に残る。

「今度はちゃんと部下を守りたい。そのためにはもっと偉くならなくてはと思う」

未曾有の金融危機を生き延びた根本さん、失職した滝沢さん。どちらにせよ、常にリスクと隣り合わせの外資金融マンは、どんな状況下でも非常にタフなのだ。

若いうちは、人生にレバレッジをかけ稼げるだけ稼ぐ。限界は訪れるが、結婚や投資に対してもリスクヘッジに余念がなければ、下まで落ちることはない。高給を享受できる時代は過ぎたとも言われたが、賢い人は難局をもしたたかに生き残る術を身につけているのかもしれない。

※すべて雑誌掲載当時

(大杉和広=撮影)
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