次に「7つの約束」という大きな政治目標を訴え、最後になって、ようやくマニフェストに触れる。

手応えは、初めに経歴を訴えたことが圧倒的によかった。人間としての自分をさらけ出し、私の人生そのものである「逆境の中にこそ夢がある」という訴えが、選挙民に届いたのだ。 

どんなポスターが有権者の心に届くのか

  私は自分をプレゼンテーションするために、あらゆるところに気を使った。

なかでも、重要視したのは選挙ポスターである。私は東大時代にゼミ生とともに『選挙ポスターの研究』(東大法・蒲島郁夫ゼミ編、木鐸社)という500ページを超える大著をものしている。多くの候補者は忙しさにかまけて、おざなりな選挙ポスターづくりをしているようだが、私は研究結果を基に精魂込めて自分のポスターをつくった。

当選するポスター/落選するポスター

当選するポスター/落選するポスター

選挙ポスターは、同じ大きさ、同じ枚数、同じ場所、同じ期間で張り出される。先の知事選では、全県の選挙掲示板6319カ所に17日間、掲載された。いわば候補者同士が同条件で自分のアピールを競うわけで、選挙結果への影響も大きい。知事選で5人のポスターが張られた掲示板を見て、手前味噌ではなく、私のものが1番目立っていた。顔の面積も、名前の大きさも一歩抜きん出ている。顔の写真などは、私の実物の顔より大きい。写真自体も、プロの写真家に100枚ほど撮ってもらい、女性支援者たちによって使用する1点を決めてもらった。

私がいいと思う写真と、有権者がいいと思う写真は違う。私は少し勇ましい感じの男性的な写真が好きだが、女性が選んだのはスマイル気味の柔らかい表情のものだった。それを使用したポスターは女性有権者に好感を与えたようで、私が獲得した票の中では女性票の割合が多かった。ただ、写真撮影では化粧をしなかった。ひげ面がそのまま写っている。そのほうが、私の真実の顔が出ると考えたからである。選挙ポスターでは化粧した顔写真をしばしば見かけるが、これはやめたほうがいい。男性の場合、素顔のほうがその人間性が表れるものだ。