2012年7月20日(金)

いわれたことしかやらない部下にどう接するか

管理職必見「打たれ弱い部下」が変わる問いかけ59【3】

PRESIDENT 2010年8月16日号

著者
荻野 進介 
文筆家

1966年、埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、PR会社を経て、リクルートにて人事雑誌『ワークス』の編集業務に携わる。2004年退社後、フリーランスとして活動。共著に『日本人はどのように仕事をしてきたか』『史上最大の決断』など。

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荻野進介=文 飯田安国=撮影

駅の雑踏の中、「この荷物見ていて」と部下にいいつけて用を足しにいった上司、帰ってきたら荷物がない。「どうしたのか」と部下をなじったら、「知らない人が持っていきました。私はいわれた通り、その様子を一部始終、きちんと見ていました」と悪びれなくいう。上司は口あんぐり……こんな話ほどではないが、まさにいわれたことしかやらないと、部下を嘆く上司は多い。どうすればそれ以上の仕事をしてくれるのだろうか。

コーチ・エイ社のシニアエグゼクティブコーチ、齋藤淳子氏によれば、安心感を抱けない組織にいると、失敗を恐れてチャレンジせず、いわれたことだけを実行する人が多くなる傾向があるという。安心感は、組織を組織たらしめ、人と人とのコミュニケーションを成立させる最も基礎的なインフラだというのである。

「組織における安心感は『あなたはこの組織の重要な一員ですよ』という承認があって初めて生まれます。その人の言動を上司がしっかり見て、褒めるにせよ、叱るにせよ、フィードバックを日々行うこと。こうすると組織に不可欠な承認が生まれていくのです」(齋藤氏、以下同)。

そのうえで指示以上の仕事をしてもらうには、上司から部下に歩み寄ることが必要という。「『今日はここまでで満足だけれど、君の実力ではこんなことまでできるんじゃないか?』『次はこまごまいわないから、この問題を工夫して解決してみてくれ』など、部下を前向きにさせる言葉とともに仕事を与えることです」。

これがうまくいけば「指示待ち部下」はいなくなるはずだが、齋藤氏はもう一つ知恵を授けてくれた。「部下がプラスアルファの仕事をできるようになるには、上司が高度な質問力を身につける必要がある。具体的には、『はい』『いいえ』で答えられる単純な質問ではなく、『なぜやるの?』『どこまでできる?』『どう思う?』というオープン・クエスチョンを状況に応じてうまく使うことです」。

例えば、「そんな方法で今日中にできるの?」というのが前者で、「様子はどう? 僕にできることはある?」というのが後者となる。前者の場合、「はい」「いいえ」というのが精一杯で、おまけに会話の主導権は上司にあるが、後者になると主導権は部下に移る。しかも、仕事の成功のために自分の頭を自由に働かせることができる。話をしながら新しいアイデアを思いつくかもしれない。その答えに対して上司も意見を述べれば、双方向の会話が続き、さらによいアイデアが生まれるかもしれない。完全な指示待ち部下はいなくなっているというわけだ。

話はここで終わらない。あなたの組織から、指示待ち部下を一掃させるには、自ら考えて動く部下を評価し、褒めることが肝心となる。「上司が褒めた方向に部下は動くもの。そうやって褒めていくと、あなたのチームでは、上司がいった以上のことを部下が成し遂げるのが当然という不文律が根付くはずです」。

齋藤淳子 さいとう・じゅんこ●コーチ・エイ、シニアエグゼクティブコーチ。国際コーチ連盟マスター認定コーチ。立教大学卒業。神戸製鋼、電通などを経て、1999年コーチ・トゥエンティワン入社。2001年コーチ・エイ転籍。コーチング・カルチャー構築とパフォーマンス向上のためのプログラムを企画・運営。

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