「うかつでした」「まったく把握していませんでした」。情報漏洩や顧客クレーム、財務の不祥事……。最近では海外拠点の運営リスクまでが顕在化するなか、経営トップの責任が問われる場面も増えている。「企業のリスク管理はどうあるべきか」──。ビジネスコンサルタントの堀尚弘氏は、独自の視点から“利益につながるリスク管理”を提言する。

リスクマネジメントは
「BPR」と一体で進める

リスク管理は対処療法ではない。
その目的は“収益貢献”である


堀 尚弘●ほり・なおひろ
ビジネスコンサルタント
ベストブレイン株式会社 代表取締役
1960年東京都生まれ。82年に警視庁採用。98年警視庁退職後、一部上場企業等で勤務。経営企画、営業開発を担当。2003年ベストブレイン(株)を設立。企業のインナーリスク管理やBCPのコンサルティングを行う。

「リスク管理」という経営課題。企業の現状を見ると、その優先度が高いとは言い難い面がある。自然災害や産業事故、コンプライアンス違反、また財務的な不祥事など、さまざまなリスクの現出が、事業存続に打撃を与える事例は多い。にもかかわらず、なぜ企業はリスク管理で後手に回ることが多いのか──。

「万一のリスクに備えるよりは、日々の売上高アップや資金繰りの方が大事、というのが経営者の本音なんです」

民間企業への豊富なコンサルティング経験をもつ、ビジネスコンサルタントの堀尚弘氏はこう指摘する。

確かに経営トップの立場からすれば、「いつ起こるかも分からない事故やトラブルにコストをかけるより、もっと前向きな施策に資源を投資したい」と思うのは当然かもしれない。リスク管理は成果が見えにくく、収益にも直結しない……。

「まさにそこが1番のポイント。逆に言えば、リスク管理への取り組みが収益に貢献することを理解すれば、経営者は本気になる。最近の傾向として30代から50代の若手経営者の間で“リスク管理にチャンスを見出す”人が増えています」

この背景には、長引く不況が「経営資源の効率的運用」を迫っており、その新たな“手法”としてリスク管理が注目されているという変化がある。

リスク対応の3つのフェーズ、(1)「普段の予防」、(2)「トラブル発生時の被害極小化措置」、(3)「トラブル収束時の信用回復措置」を設定し、環境変化にあわせて、それを随時更新していくことで「BPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)」を実現する。つまりリスク管理を、組織の体質改善へと展開していくわけである。

堀氏によると、リスク管理の概念が生まれる契機となったのは1962年のキューバ危機のとき。その後、“リスク管理はBPRに貢献する”という発想が生まれた。また「リスクマネジメントの1つであるBCP(事業継続計画)の策定においてもBPRは必須条件」とのこと。そして利益貢献についても、例えば都内の大型コンベンション施設では、荷物搬入用の車両に向けた駐車システムを構築することで、新たなビジネスモデルを確立。イベント開催時の事故・混雑防止だけでなく、新たな収益源確保につながったという。