キャピタルゲインは基準価額の値動きによって決まる。投信を買ったときよりも基準価額が値上がりしていれば、売却したときにキャピタルゲインを得ることができるが、逆に値下がりしてしまうとキャピタルロス(売却損)が発生してしまう。だから、本来、分配金の多い・少ないだけを見て投信のよしあしを判断するのは間違いだし、ましてや、その商品を購入するかどうかを判断する決め手にはならない。

ところが、販売の現場では「分配金利回り」なる言葉が使われていたりする。分配金利回りは1年間にもらう(予定の)分配金を購入時の基準価額で割って算出されたもの。例えば、1万口あたり100円の分配金を毎月もらうと年間1200円になる。そのときの基準価額が仮に8000円とすると、「1200円÷8000円×100で分配金利回りは15%になりますよ」というわけだ。仮に100万円投資したら、15万円の分配金がもらえるような気になる。本当にそうなら、かなりお得だろう。

しかし、計算の前提となっている「1年後も基準価額が同じ」ということはありえない。そもそも投信は値動きのある商品だからだ。それに、分配金というのはどこからか湧いてでるわけではない。投信の資産を取り崩しているだけだ。仮にマーケットが動かない場合、年間1万口あたり1200円の分配金を出すと、1年後の基準価額は10%下がってしまう。つまり、それを上回るくらいマーケットが上昇しないと基準価額はプラスにならない。

リーマン・ショック後、基準価額が急落したため、みせかけの「分配金利回り」が高い投信が増えている。それを逆手にとったセールストークには注意が必要だろう。

毎月分配型の中でも特に人気を集めているのは「通貨選択型」といわれる投信である。が、この投信はしくみがとても複雑で、「どういうときに基準価額が上がるのか・下がるのか」を理解する必要がある。そこを理解しないまま「分配金が多いから」という理由で手を出すのだけは避けたい。わからないものには手を出さないのが、投資をするうえで一番の基本だ。

※すべて雑誌掲載当時

(構成=村上 敬 撮影=市来朋久、宇佐見利明、坂本道浩 図版作成=ライヴ・アート)
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