カシオと競合する会社は、大半が技術、製造、マーケティングという伝統的な諸機能を中心にして組織されており、集積回路(アイ・シー)専門の生産施設を所有するなど、垂直統合に専ら努めてきた。

カシオはそうした他社とは対照的に、いまもなお、基本的に、技術とマーケティングとアセンブリーの会社のままだ。製造設備や販売チャンネルには、ごくわずかの投資しか行なっていない。

この会社の強みは、対応の柔軟性にある。競合他社が新製品を急には市場に出せないと見てとったカシオは、製品のライフサイクルを速め、短縮化する戦略を採用した(10-4図)。

カシオは、厚さ二ミリメートルというカード大の電卓を売り出すと、すぐそのあとを追うように急いで価格を下げ始め、他社が類似製品で追随する気をなくすよう、手を打った。そしてさらに、二、三カ月もたたぬうちに、数字のキーに指が触れると楽音を発するモデルを発売したのだった。

カシオの場合、その戦略は、消費者の欲求を市場に最も近い人たちに分析してもらい、その結果をすぐに技術的に製品に生かせるよう、設計と開発をマーケティングの領域に組み込んでしまうことだった。

同社はこの機能を非常にうまく育て上げることに成功し、おかげで新製品をすぐに旧式化することができるようになったのである。競合他社は、この種の製品には一年ないし二年の寿命があると考えて、組織を垂直統合してきたところばかり。おかげで、彼らはすべて、著しく不利な立場に追いやられてしまった。

その結果、こうした競合他社の一部では、各部門間に心理的な蔦藤まで起こる始末となった。たとえば、捜術部門がマーケティング部門のいうことを信用できなくなった、といった具合である。もちろん、その逆のケースもあった。