「叩きながら唄う」ことの面白さ

――場数とおっしゃいましたね。1日何時間叩き続けてきたんですか。

シシド 一人の練習はだいたい多くて5時間くらいです。バンドを8個ぐらい同時にやっていたときがあるんですけれど、そのときは、大学に行って、夕方に1個バンドやって、夜にもう1個バンドやって、夜中に練習して、朝帰って、学校行って……みたいな感じで。ほぼ毎日6時間以上叩いていたんじゃないですかね。

――体、壊れませんか?

シシド どこでも眠れるので(笑)。通学の電車の中とか、ヘタしたらドラム叩きながら寝たりとか。

――ご飯はかなり食べる?

シシド すごく食べます(笑)。大好きなんです。

――他誌のインタビューで「寝ていたら身長伸びた」と書いてありましたが。

シシド そうです。牛乳飲んで寝ていたら(笑)。眠るのが大好きなんですよ。

――唄いたいと思ったのはいつからですか。

シシド 小学校時代、クワイヤ(聖歌隊)に入っていたりとか、唄うことはずっと好きでした。「唄おう」と決めたのは、今、一緒にやっているプロデューサーの大島賢治さん(ハイロウズ)、平出悟さん(UVERworldプロデューサー)と出合ってからですね。

――唄いながら叩く、というアイデアも彼らから?

シシド それは最近です。3人で話をしていて。最初は「叩きながら唄えよ。けっこう、いないから」という笑い話だったんですけれど、じゃあ実際にやってみようかとなったのはけっこう最近です。その前は、ハンドマイクで、ギター持ったりして唄っていました。テイチクさんからメジャーデビューが決まったときは、わたし、まだハンドマイクのヴォーカリストでした。

――では、叩きながら唄うと決めたのは?

シシド 去年です。去年の春ぐらいだと思います。

――叩きながら唄うのは難しくないですか。

シシド 難しいですね(笑)。最近はちょっと慣れてきたのでペースも早くなってきましたけれど、いちばん最初にやろうとしたときは、難しいところはスネア(注・左手前に配置されたドラム。ドラムス演奏の要)を打っているときに「わ」って言って、打ち終わってスティックを上げている間に「たし」――「わ、たし」って、細かく、ゆっくり、頭の中を整理していきながらやっていましたね。

――ひとつひとつ分解しながら、ことばの位置を確認して。

シシド はい。最初にドラムが叩けるようになって、次に唄えるようになって、次に叩きながらメロディーを口ずさめるようになって、そのあとことばを乗せられるようになって、わからないところはゆっくりやって……と。

――今、「難しいところ」を伺ったのですけれど、「叩きながら唄う」の面白いところは、どこですか?

シシド 感覚的なことになってくるんですけれど、全部投げ出している感じが面白いんです。叩いて、唄って、体も全部使って、頭も全部それに向かっているし。体調も何もかも、すべて出てしまう。それが面白いですね。「今日のわたし、これです!」っていう感じですかね。叩くだけで唄っていないうちは、声帯という使っていない部分があったわけです、ふふ(笑)。そこも使うとなると、ほんとうに「全部」なんですよ。

――ドラムは元々脚も使う。ほんとうに全身なんですね。

シシド 全身です。ドラムだけ叩いているときも、よく叫びながら叩いていたんですけれど(笑)。