朝日・読売と提携海外進出にも注力

――朝日、読売との3社間で「ANY連絡協議会」を12年春をめどに設立すると発表している。狙いはなにか。

喜多 3社ともニュースでは競争する。しかしそれ以外の部分ではできる限り協力していこうという考えをもっている。そうしなければ、この環境変化には対応しきれない。設立の目的は、災害時の相互支援や販売協力などだ。

12年2月から京都府と滋賀県向けの印刷を朝日に委託している。朝日からは07年4月から茨城県向けの印刷を受託している。そうしたコスト改善にはさらに取り組む。

――11年12月にはTBSとの提携も発表した。

喜多 自社にないものを他社との協力で補うことは、一般企業では広く行われている。当たり前のことを、当たり前にやるだけの話だ。実は提携にはテレビ東京も含まれている。「日経のブランドを棄損しない」という絶対条件を守るならば、いろいろな企業と提携し、様々な分野に進出していきたい。このポリシーは、私の考え方として、いつも全社員に言っていることだ。

――少子高齢化で労働力人口の減少が見込まれている。長期の経営ビジョンについて教えてほしい。

喜多 「3つのC」と説明している。1つ目は「Cutting edge」。電子版など先端的な技術を取り入れること。2つ目は「consolidation」。日経グループの資源を結集させていくこと。3つ目は「Cross border」。国境にとらわれずに経営を進めていくことだ。

これには「内外(ウチソト)」、つまり日本国内の情報を英語や中国語で発信する方法がある。11年12月にiPad向けの週刊英字経済誌「The Nikkei Asian Review」を始め、12年3月には中国語ニュースサイト「日経中文網」を立ち上げた。取り組みの第一歩だ。海外の情報を国内に届ける「外内(ソトウチ)」にも力を入れる。

ただ、私が最終的にやりたいのは海外の情報を海外で展開する「外外(ソトソト)」だ。内需産業といわれたコンビニでも、海外進出を成功させつつある。日本の普通の企業がやっていることを、われわれもやらなくてはいけない。

日本の労働者人口が減少していく中で、選択肢は2つだ。マーケットの縮小に合わせて会社を小さくするか、新たなマーケットを求めて外に出ていくか。国内でのシェア競争には限界がある。われわれのコンテンツを読んでくれる人を求めて、外に進出することが必要になる。

――新年度を迎え、日経の購読を始める新社会人も多い。しかし1~2年で購読をやめる若年層が増えていると聞く。

喜多 頭の痛い問題だ。社内では「いきなり日経」と呼んでいる。これまで新聞購読の習慣がなかったのに、仕事上の必要から、いきなり日経新聞から新聞を読む層がいる。こういう新しい読者をどうサポートするか。2012年は組織としてプログラム作りに取り組まなければと考えている。

重要なことは「わかりやすい紙面作り」だろう。経済現象を深く理解していなければ、わかりやすい原稿は書けない。一昔前までは「わかるやつにわかればいい」という書き方も許されていたが、今は違う。わかりやすい紙面作りを愚直に徹底したい。

※すべて雑誌掲載当時

(星野貴彦(プレジデント編集部)=インタビュー・構成 門間新弥=撮影)