藤川太のアドバイス

Eさんは膨大な仕事量の処理に追われて、いつ心が折れてもおかしくない状態に追い込まれている。それは妻も同じ。収入は横ばいなのに教育費などの出費は増える一方で、家計簿は理想とはほど遠い。とはいえ世間的に見れば高い1000万円の年収があるのだから「家計管理すらできないダメな妻」と自分を責め、落ち込んでいる。

ただEさん夫婦は多感な時期を迎えた子どもが私立中学に入学したばかりなので、転校だけは避けたいということで思いが一致している。

しかし残念ながらEさんに選択肢はほとんどない。年収ダウンを覚悟して会社に地方転勤を願い出るか転職するかだ。現在の年収を維持しようとすると忙しさも変わらないので、家計を見直すことで減収分を乗り切るしかない。そこで転勤や転職で収入が30%減の年収700万円になっても耐えられる家計を考えよう。

最初にやるべきことは、年収が1000万もありながら毎月の貯蓄がほとんどできていない原因の解明だ。

まず考えられるのは固定費が高いことだ。非常事態なのだから徹底的に削ろう。車を手放す。教養娯楽費を削る。高めだった夫の小遣いも半減させる。これらを見直すと毎月8万1000円もの削減になる。

保険の見直しも必要である。子どもが大学を卒業して社会人として自立するまでの8年間だけ保障を厚くしておけばいいので、「年収700万円」のケースで取り上げた逓減型収入保障保険などに切り替えて1万4000円削る。それに夫に万が一のことがあっても正社員でいれば死亡退職金や遺族厚生年金なども支払われる。このような死後の収入を加味すれば、妻子がすぐに生活に困窮することはないだろう。

次に日々のやり繰り分の削減。具体的には食費を抑えることである。専業主婦の利点を生かして外食を控えて、内食に徹する。食材リストを作成して余計な買い物をしないように努めたり、食材も安いものを選んで買う。事前に献立を考えてスーパーに行ったとしても、その日に安売りしている食材があるのなら臨機応変に献立を変更するという柔軟さも必要である。こうした工夫をすれば2万円程度浮くだろう。また、被服費もかかりすぎなので、ブランドものにこだわらずに、高品質で安い衣料を探す努力をする。新たにつくった家計では貯蓄のみ5000円増やしたが、トータルでは11万7000円の削減になっている。