スマートフォンやタブレット端末など「スマートデバイス」の利用が急拡大している。スマートデバイスはいま、業務でどう使われているのか。そして、抱える課題とは何か──。

守りの姿勢が強すぎると
可能性をつぶすことにもなりかねません
藤吉栄二
(ふじよし・えいじ)
野村総合研究所 上級研究員
情報技術本部 イノベーション開発部
1970年生まれ。95年大阪大学理学部物理学科卒業後、電機メーカー系列企業を経て、2001年に野村総合研究所へ。専門は無線、モバイル技術など。

ビジネス現場での活用事例に詳しい、野村総合研究所の上級研究員・藤吉栄二氏に聞いた。

「単なる期待感から導入する、という段階はそろそろ終わり、現在では経営課題を解決するための具体的手段として導入を検討するところが出てきています」

企業におけるスマートデバイス活用の現状について、野村総合研究所(NRI)の藤吉栄二氏は、こう説明する。

2008年にiPhoneが日本上陸。それ以降、アンドロイドOSを搭載したスマートフォンやiPadなどのタブレット端末が相次いで投入され、スマートデバイス市場は急速に進展した。特に国内携帯電話市場では2010年から11年にかけてスマホの販売台数が倍増。いまや出荷台数の半分以上を占めている。

そうしたなか、NRIではすでに6年前から「産消逆転」というキーワードで、“企業より個人のIT環境の方が先に高度化する現象”を指摘。また「ITコンシューマライゼーション」という米国発の概念も、一般消費者市場の牽引力の大きさを表現している。つまり企業の課題は、「この潮流をいかにビジネスの現場に取り込めるか」。その成否が今後の競争力を決める重大な要素の1つとなり始めているのだ。藤吉氏は言う。

「市場全体が拡大し、製品も多様化しているスマートデバイスは、クラウドはもとよりソーシャルメディアにも使え、持ち運びも容易。これからITインフラの整備期に入る企業にとっても、久々に出てきた“使えるクライアント端末”と言えるでしょう」

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実際、米国ではスマホを社内ITとして利用する企業は全体の6割を超えている。タブレット端末は同じく3割。一方、日本ではそれぞれ1割前後に留まっている(左のグラフ参照)。

「今後、日本企業でも導入する企業が増えるのは間違いないでしょう。まずは社員に支給していた従来型携帯電話をスマートフォンへ切り換えるところから導入が進むことが予想されます」

そこで大事なのは、やはり具体的なメリットを引き出すことにほかならない。