Q 昔から人とのコミュニケーションがあまり得意ではありません。今年入社した会社でもみんなといまいち馴染めず、飲み会にも誘ってもらえず浮いてしまっています。どうしたらいいですか?(運送会社、男性、23歳、入社1年目)


A サラリーマンとしてやっていけないほどコミュニケーションが苦手なのであれば、それは問題です。でも「飲み会に誘ってもらえない」「社内で浮いている」……これのどこが問題なんでしょうか? まったく悩む必要などないと思いますよ。

誘われないのも辛いかもしれませんが、それよりもっと辛いのは、誘いを断りたいのに断れないことです。以前、こんな話を聞きました。

「私の職場では毎日決まったメンバーでお昼を食べているのに、終業後も同じメンバーでほぼ連日のように飲みに行く。話題といえばグチばかりで意味がないし、全然自分の時間が持てないから断りたいが、断ると『えっ、どうして?』と真顔で聞かれてしまう」

僕が「何か理由をつけて断ったらどうですか」と言うと、「もう、何人も親戚を殺したんです」。つまり「親戚が亡くなったから今日は行けない」という言い訳も、もうネタ切れになるほどなんだと。

こんな職場でもマイペースを貫ける人はいいけれど、人の顔色が気になるタイプの人は相当な心理的重圧を感じるはずです。

それではみんなと一緒にいるのが苦にならない場合はどうでしょう。こんなふうに群れるのがいいかと言えば、それも違います。このようなコミュニティにどっぷり漬かってしまうと、自分の勉強のために本を読む時間もとれないし、社外の人と会って視野を広げることもできない。そのうち会社だけが自分の世界のすべてになって、発想がどんどん内向きになってきます。こうなるとプロフェッショナルサラリーマンどころではありません。

したがって、社内で浮いていても何の問題もなし。もし飲み会に行きたいなら、自分から誘えばいい。コミュニケーションが苦手ということですが、自分が幹事になれば日時も自分の都合で決められるし、お店やメンバーもある程度自由に選べます。誘うほうが主導権を握れるのです。

社内外を問わず、なにかの勉強会を主宰するのも良いかも知れません。そこに、社内のお馴染みの飲み会メンバーも誘うのです。逆に、相手が断る状況をつくるのも上手く誘いを断る常套手段です。「あいつ変わったな」と言われることを恐れていては、いつまで経っても変われませんし、本当に優れている人は、「いつまでも変わらないね」と言われるために日ごろから変わる努力をしているのです。

もっともコミュニケーションが苦手なことで仕事に悪影響が及ぶようなら、それは少々まずい。そこは意識して改善する必要があるでしょう。

手始めに、メールの書き方から見直してみてはどうでしょうか。コミュニケーションが下手な人は、たいていメールもあまりうまくないものです。

相談者は運送会社勤務とのことなので、日常の業務は車の運転が中心で、あまり仕事ではメールを使わないかもしれません。でもメールは出す前に何度も文章を推敲できるので口下手な人には有利だし、仕事の指示はメールで行われることがほとんどですから、メールがうまくなれば、コミュニケーションがかなりうまくいくはずです。

具体的な練習方法としては、メールのうまい人を真似してみること。「このメールはいい」と思ったら、プリントアウトして、「なぜうまいと思ったんだろう」「なんで指示がスッと頭に入ったんだろう」「読んでいて気分がよくなったのはどうしてだろう」と、文章の構造や言葉の選び方を分析してみるのです。そしてそれを自分でも真似してみる。自分の中で黄金のパターンを蓄積していくのです。

そうやってメールをマスターしたら、今度はコミュニケーションのうまい人の話し方や立ち居振る舞いを真似してみる。そうやって少しずつ力をつけていけばいいと思います。

※本連載は書籍『プロフェッショナルサラリーマン 実践Q&A』に掲載されています(一部除く)

(撮影=尾関裕士)