「サークルやバイトに明け暮れる大学生活は送りたくなかったんです」と言うのは、国際教養大学2年生の上条和輝さん(仮名)。

本で読んだ、10年1日のごとき内容を漫然と教える日本の大学の現状も、自分の求めるものとは違うと思っていた。そこでいろいろ調べた結果、この大学を知ったという。

「自分を鍛えてくれる大学」――秋田杉を配した24時間オープンの図書館。

「当時は今ほど知名度が高くなく、親や先生には反対されました。『東京出身で地元に大学はいくらでもあるのに、なぜ秋田まで行かなければならないの』とか。でも、自分を鍛えてくれる大学に行きたかったんです」

外交官志望だという上条さんにとって、オール英語による幅広い教養教育は将来の仕事に欠かせないものだ。1年次に入寮が義務づけられるキャンパス内の寮では、海外からの留学生と相部屋になり、日々の生活のなかでも異文化コミュニケーション力を鍛えられる。

「外交官になるだけならほかの有名大学のほうが有利かもとずいぶん悩みましたが、なってから役立つのは何かということのほうを重視したんです」

世間の人気ランキングがあてにならない時代を生き延びる力とは

この12月からは、ロシア語とロシアの外交政策を学ぶため、その隣国ラトビアの大学に1年間留学する予定だ。「現地の学生と同じ基準で単位を取得しなくてはならないので大変ですが、雰囲気が様変わりするほど成長して帰ってくる先輩たちを見ているので、自分も頑張ります」(上条さん)

今や親の世代とは異なり、東大を出ても就職が保証されず、弁護士資格を得ても生活に窮する時代だと指摘するのは、早稲田塾総合研究所の赤坂俊輔氏。「どうやって生きていけばいいかという正解がない以上、世間の人気ランキングなどを気にするより、自分の夢を『食える仕事』にできる力を鍛えることが重要だと思います」。

これからの大学選びは、そんな視点から行うべきかもしれない。

(宇佐見利明=写真)